職場の部下や同僚、あるいは家族や友達に対して何かを伝えたいと思ったとしましょう。自分の口から発せられた言葉が、相手の耳に届き、うんうんなんて頷いてくれている。そしてあなたは「よし、これで伝わったな」と安心するわけです。だけど、そこから数日してあなたは気づくことになります。「あれ?やっぱり上手く伝わってない?分かってもらっていない?」

 どうしてそんなことが起きるのでしょうか。ひょっとするとこちらの伝え方が悪かったのかもしれない。あるいは相手の聞き方に問題があるのかもしれない。しかし、きちんと言葉を選んで丁寧に分かりやすく伝え、そして相手も真剣にこちらの話を聞こうときちんと耳を傾けてくれたにもかかわらず、上手く伝わらないことだってたくさんあります。所謂「腑に落ちていない状態」ですね。

 これは結構深刻な問題で「ちゃんと伝えているのにどうしてあいつは分かってくれないんだ!おかしいことは言ってない。ちゃんと伝えている。あいつもちゃんと聞いてくれている。でもあいつはなにも変わらない……そうかあいつに何を言っても無駄なんだな」と諦めてしまうことだってある。

 喉が渇いて仕方がない時に、さっと気の利いた飲み物を差し出され、ついゴクゴク飲んだら乾いた身体に染み渡る思いになったことはありませんか。

 私が最近考えているのは、そんな風に言葉を届けることができたなら、その時こそ、ちゃんと上手く伝わるんじゃないかということなんです。

 いくら素晴らしい相手にとってためになる助言でも、相手が「乾いた」時でなければその人の心の中にまでは沁み込まない。だから本当に伝えたいことがある場合には、分かってもらいたいことがある場合には、その人が乾く状況を待つ(あるいは意図的にそのような状況と作る)というのもひとつの手かもしれないなと思っています。

 タイミングって、ものすごく大事。

 その時に一番ふさわしい言葉をきちんと届けたいものですね。

 

兵庫支店長 増尾 倫能