先日、経営者仲間数名で歴史上の人物評を肴に居酒屋で酒を酌み交わしました。織田信長は結局失敗したな、いやいや坂本龍馬はあの時こうしていれば・・・等々、振り返ってみると、よくもまあ偉人達の欠点をあげつらって色々言えたものです。いつものことなのですが、自分のことを棚に上げての人物評はなんとも楽しいものです。最終的には熱が入り、豊臣-徳川の代理討論にまで発展し、まさに居酒屋での大阪秋の陣となりました。
 
 さて、同じ人物評でも、職場の人事評価となればまた趣が違ってきます。職場への不満アンケートでは『会社から適正に評価されていない』という項目が常に上位に出てきます。公正・公平に人を評価するということがいかに難しいかということでしょうね。それだけに、最近は事業所から人事評価制度の設計依頼も多く、職場を活性化させるような制度設計に奮起している今日この頃です。
 
 人事評価制度は、タイプで言えば「野球型」か「サッカー型」に分かれます。「野球型」は野球選手のように打率や本塁打数といった個人成績で判断できるので、第三者が客観的に評価できますが、「サッカー型」は、サッカー選手のようにある程度は個人成績で判断できても、そもそも与えられた役割が大きく異なるので社員同士を単純に比較できません。また、このタイプは社員同士の連携が重要になってきますので、「野球型」のように第三者が客観視できるような成果の明確化は容易ではありません。組織に貢献するような献身的な仕事ほど表面化しにくく、また数値化は困難ですからね。
 
 この「サッカー型」で社員を少しでも適正に評価しようとすると、職場が20人未満であれば社長自らが、それ以上の規模であれば部門長等の管理者が、心血を注いで社員を「観る」しか方法はありません。社長が求めるのはどんな人間か、どんなことをしてほしいのかを明確にして、実際の成果を強制的に数値化する。この制度設計はシステマチックにはいかないので、設計する側から言えば、しんどくもやりがいのある仕事であり、いま流行りのAIにはなし得ない、人間ならではの仕事といえるでしょう。評価制度に絶対解はないので、よりよい職場づくりのためのツールとして、半永久的に腕を磨いていくテーマと捉えています。
 
 冒頭の居酒屋での話に戻りますが、ちなみに私の考える「歴史的ベスト評価」は、織田信長が今川義元を破った有名な「桶狭間の戦い」での評価です。信長が一番手柄として評価したのは、敵の総大将を討ち取った人間ではなく、「総大将は桶狭間にて休息中」という情報をもたらした人間でした。言うまでもなく「情報」というものの価値概念がない400年以上前の話であり、当時の常識ではあり得ない評価です。信長の常人離れした先見性に舌を巻くとともに、このような物事の本質を突いた「本当の成果」を評価できるような制度設計を目指しています。

 

大阪支店長 吉村 徳男