先日、所用があり姫路を訪問しました。世界遺産の街を素通りするのももったいないと思い、せっかくなので姫路城まで足を延ばしたのですが…日曜日にもかかわらず街全体がガランとしており、これがアフターコロナかと、連日報道されている状況を肌で感じました。それにしても、コロナ禍が未だ収束しないとはいえ、ここまで人が居ないとは…。近年は外国人観光客が増加していた陰に隠れて、日本人観光客はすでに相当減少していたのでしょうね。まだ自粛の傾向があるのかもしれませんが、寂しい限りでした。

 ビフォ―コロナの世界では、訪日外国人観光客数は3,200万人程度と言われていました。2020年目標として4,000万人、2030年までに6,000万人というのが政府の目標でした。これが今回のコロナ騒動でどうなるかは分かりませんが、政府の観光客誘致の優先順位を見直す良いきっかけになるのは間違いありません。結果論で言うつもりはありませんが、とにもかくにも「観光客を増やせ」という目標は果たしてどうだろうかと思っていました。

 一国民として、日本のことを素晴らしいと思って訪日してくれる外国人が増えることは嬉しい限りです。ただし、それは数値目標にすると趣旨が変わってきます。数値を稼ぐための国・景観・文化になり下がらないでしょうか。もちろん全てとは言いませんが、津々浦々の観光地でそれを目の当たりにできると思います。当然、外国人観光客の存在なしには生活できない人々も出てきており、外国人観光客への依存が垣間見えます。

 イタリアやギリシャの先例から、観光に力を入れると皮肉にも国力が落ちていくように思います。そういう意味で、外国人観光客の存在はいわば「甘い蜜」。依存すると贅肉がつき健康を損ないます。言葉を変えれば、日本が外国人観光客に搾取されていると言えなくもありません。観光で潤う資金は「ボーナス」くらいの認識でちょうどいい気はします。他の分野でいかに身を立てるかを考えないと、それは現実逃避とも言えるでしょう。

 投資の世界でも「卵は一つのカゴに盛るな」という格言があります。卵を分けて置いておくことでリスクの分散を計るという意味ですが、会社の顧客でもそうですし、交友関係でもそう。何かに依存しきると、それが失われた時の影響が計り知れません。今回のコロナ騒動で、それをまざまざと見せつけられました。アフターコロナこそ過去に依存せず、日本国としていかに訪日外国人観光客と向き合っていくのか、一国民として見守りたいと思います。


 

大阪支店長 𠮷村 徳男