良いモノやサービスがあれば売れる。少なくともここ日本では長らくそう信じられてきました。しかし今では社会にモノやサービスが溢れかえっています。このような時代に、人間はいったい何を求めることになるでしょうか。

 こんな話があります。とある高級スーパーで、3種類のニンジンを売っていました。1つめは100円の値札がついた何の変哲もない普通のニンジン。その横には3割だけ高い130円の無農薬で育てたニンジン。そして最後に、200円のニンジンです。その200円のニンジンは、見た目はその他2つのニンジンとそれほど変わらないのですが、唯一違うのは、袋の中に紙切れが1枚入っているという点です。その紙切れには生産者の顔写真と電話番号とメールアドレスのほかに、こんな文章が書かれていました。

 「このニンジンは、農薬を使わず、自分の手で雑草を引き抜き、自分の手で害虫を潰しながら育てたニンジンです。ちょっと割高ですが、どうぞ食べてみてください」

 さて、この3種類のニンジンのうち、一番の人気商品になったのは最後の200円のニンジンだったということです。入荷量が限られているとはいえ入荷即完売という大人気っぷりです。

 一体消費者は何を求めているのでしょう。

 無農薬で育てたニンジンを買いたければ130円出せば買えます。それでもわざわざ200円出して買う理由は、無農薬というポイントではなく、プラス70円の付加価値――つまり生産者の理念あるいは生き様を応援したいという共感――にあると考えられます。

 めまぐるしいスピードで技術革新が進み、次々に新しいモノやサービスが生み出される今、そのモノやサービスのレベルが上がれば上がるほど、値段や機能だけではない、プリミティブな理念や人間の体温こそが求められる時代になってくるのかもしれません。

 
 我々も、顧問先の企業だけでなく社会から「応援したい」「一緒にやっていきたい」と思って頂けるような、そんな皆様からの共感を得られるサービスを提供し続ける社労士法人でありたいと考えます。

 

兵庫支店長 増尾 倫能