とにかく何でも効率化が求められるこの時代、特にビジネスにおいては無駄を削ぎ落とすことが重要視されがちです。しかし無駄や余白が一切なければ、考え方が硬直し、融通も効かなくなる。あるいは一見無駄に思えることや余分に感じることが自分を助けてくれたり、新しい発見やひらめきを生み出したりする、そんな体験はありませんか。

 話は変わって、私の経歴はどちらかというと寄り道ばかりです。高校を卒業してすぐ、関西の私立大学に入学。人並みに受験勉強もして、難関校ではないけれどそれなりの大学に合格しました。しかし思う所あってその大学を2年で中退し、朝からガソリンスタンドのアルバイトに励みながら航空関係の専門学校の夜間部に2年通うことにします。そして専門学校を卒業してからは航空会社に入社、そこで約11年勤めたあと、今の事務所に入って社労士として働いているわけです。
 大学を中退し、一般企業で人事総務の仕事をした経験もない私が、こうして社労士の仕事をするなんて、何がどう作用してそうなるのか。大学を辞めると伝えたときの家族や友人には到底想像できないことでしょう。

 よく思うのですが、細かいものも大きなものも、毎日を生きていく上で選び取るひとつひとつの選択は、それが正解か間違いかなんて死ぬ時まで分からない。一見良くない選択に見えていて、実際に悪影響が及んだとしても、また将来その経験が生きてくるかもしれない。他の扉を開く鍵になるかもしれない。そうであれば、できるだけ最短距離ではなくいろいろな寄り道をして、人生をカラフルに彩り、キラキラした無駄や余白をたくさん集めておきたい。

 IT技術やAIの目覚ましい発達で、これからはますます無駄や余白が「邪魔者扱い」されるようになるでしょう。でもそこにこそ大切なものが眠っているような気がするこの頃です。

 
 

兵庫支店長 増尾 倫能