私は洋の東西を問わず美味しいものには目がないのですが、その中でも特に日本料理が好きです。季節や旬を楽しめますし、何よりあの絶妙な、繊細な味付けが素晴らしいと思っています。強烈な香辛料で素材を味付けする中華料理、あるいは濃厚なホワイトソースで素材をくるむフランス料理も美味しいのですが、それらの料理では旬や素材の良さをあまり感じることはなく、なんとなくもったいない思いに駆られるのです。そういう意味で、「旬を意識して素材の味を最大限に活かしつつ、味付けは必要最小限に留める」日本料理のそのあり方が、私にはしっくりくるのです。
 
 組織を運営する立場で、私はこの日本料理の考え方を参考にしています。すなわち、人材の素材(個性)を重視して活かし、味付けは最低限に留める。個性ファーストとでも言いましょうか、こういった和食式人材活用法を実践しています。組織に都合のいい人間に育てるのではなく、個性を伸ばして組織の武器の一つにする。完全なボトムアップ型、ですね。
 
 従来は組織の目標をチームに、チームの目標を個人に落とし込むいわゆるトップダウン型が一般的ではありましたが、そのやり方では限界が見えつつあります。もちろん業種にもよりますが、仕事でも家庭でも多様化が進む中で、また社員にも多様な制約が出てくる中で、社員を一律に会社色に染める管理はもはや不可能(というよりは非効率)な時代になりつつあります。それでは業績が飛躍的に伸びることはないでしょう。
 
 ビジネス環境の変化に対応して競争を勝ち抜いていくには、今後は多様な人材に支えられた組織であることは必須になります。個性を認め、強みをより伸ばし合えるような、柔軟な体制が求められます。そのためにも、和食式人材活用法。人事制度や評価制度を交えながら、より「人材を活かした」組織を目指す必要があります。
 
 働き方改革が叫ばれる昨今ですが、多様な社員が充実して思いっきり働くことのできる職場環境さえ準備すれば、効率や生産性はおのずと向上していく、そう思います。
 

大阪支店長 吉村 徳男