人材不足や変化の激しい時代のなかで、私たちは日々さまざまな課題に向き合っています。採用が思うように進まないこともあれば、新しい制度がなかなか浸透しないこともある。社内の雰囲気が停滞していると感じる場面もあるでしょう。そんなとき「何か打ち手はないものか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そんな場面で、ふと思い出した言葉があります。「運動」という言葉です。よく見ると「運を動かす」と書きます。もともとそういう意味ではないのですが、妙に心に響きます。状況が滞っているときこそ、考え込むよりまず動いてみる。その小さな動きが風向きを少しずつ変えていくのではないか。運がそっと動きはじめるのではないか。そんなふうに感じています。
とはいえ、行動に移すのは容易ではありません。私自身「いまは動けていないな」と思う瞬間が多々あります。変えなければとわかっていても気持ちが追いつかない、計画が整わないと一歩を踏み出せない。そんな“動けなさ”を抱えながら日々を過ごしている方もきっと少なくないのではないでしょうか。
先日、ある経営者から「若手社員とのコミュニケーションが難しくなってきた。何か打ち手を講じたいが、どこから手をつければよいものか…」という話を伺いました。その言葉にふれながら、「まずは小さく動いてみる」。そんな一歩が、やはり大切なのだろうなと感じています。たとえ迷いながらであっても、そうした動きが自分にも組織にもゆるやかな変化をもたらしていくのだと思います。
企業や組織においても、それはきっと同じなのだと感じます。新たな制度を導入する。働き方を見直す。人材育成の仕組みを整える。どの取り組みにも明確な正解はありません。ただ動き出した組織の中には、何かが芽生えていくように思います。社員一人ひとりが自らの強みを活かし主体的に動ける環境を整えること。その積み重ねが、組織に新たな活力を生み出し、結果として採用や定着、エンゲージメントの向上にもつながっていくことでしょう。
動くことは個人にも組織にも通じる未来への態度だと思います。円安や物価高騰、経済の先行きが読めない今、私たち労務の現場にも柔軟な対応力が求められています。うまくいかないときや自信が持てないときこそ「運を動かす」ための一歩を意識したいものです。自分自身にも、そして皆さまの組織のなかでも、その一歩を支えられる存在でありたい。そんな思いを胸に、今日という一日もまた、小さな一歩をていねいに積み重ねていきたいと思います。
福岡オフィス所長 城戸 康行