生き方に合わせた働き方

支店長コラム

 イチロー選手が球界を引退しました。世界最多安打をはじめ様々なタイトルを獲得した同選手ですが、彼の野球に対する向き合い方をご存知でしょうか。小学校卒業時の作文でプロ野球選手になることやその過程の成績、契約金の目標額まで具体的に明記していたことは有名ですね。小学校高学年の時には既に年間360日は猛練習をしていたということですが、そういった努力や目標に対する真摯な態度が、数々の大記録を生み出したのでしょうね。
 
 さて、世間では働き方改革が連呼され、長時間労働是正が国是となっています。電通事件をはじめとして未だに毎年200件程度の過労死・過労自殺案件の発生する日本においては、主要な原因である長時間労働の是正は必要ですし、早急に解消しなければいけない問題です。来月より残業時間に上限規制が設けられますが、ある意味当然の流れと言えます。
 
 一方で、仕事が好きでたまらない、あるいは納得するまで仕事を仕上げないと気が済まない、というタイプによる長時間労働も少なくありません。いわばイチロー選手のようなタイプ(※プロ野球選手は一人親方なので労働法規制の対象外です)であり、長時間働くことは「悪」であるとする風潮には逆行する働き方ですね。企業のコンサルをしていると、現場ではそういうタイプに支えられている組織がほとんどではないかとさえ感じています。
  
 この両者、制度として共存できないものでしょうか。健康を損なうような働き方をしては元も子もありませんが、人により程度の差こそあれ、ある程度の負荷が仕事の質も人間性も成長させることもまた事実です。もちろん、長時間労働を労働者に強要することは許されませんが、成長や更なる高みを望んでいる人間の労働時間まで一律に規制することは、業界業種を超えた第2第3のイチロー選手の出現を阻むことにはならないでしょうか。多様性を認めず、枠を設けてひとくくりにするやり方には危惧を覚えます。
 
 少し前に流行った「ワーク・ライフ・バランス」という考え方では、ワークとライフは別物で、ワークの「時短」自体が目的になってしまっているので、ワークに没頭したい人間の成長機会を阻害してしまいます。そんな違和感から、最近は「ワーク・アズ・ライフ」や「ワーク・ライフ・インテグレーション」といった考え方が出てきています。つまり、仕事は生活(人生)の中の一部であり、そこに境界線は存在しないという考え方です。定時で退社したい人はそうすればいいし、とことん仕事に打ち込みたい人もそうすればいい、そんな個々の生き方に柔軟に合わせた制度・組織の在り方こそが、この働き方改革で求められていることなのではないでしょうか。

 

大阪支店長 吉村 徳男