先日、地元の行きつけの店にランチに行くと、オーダーがタッチパネルに切り替わっていました。都会では当たり前になりつつありますが、地元(田舎)でもAI化の波は避けられないようです。飲食店で導入されだした頃は、「なんと味気ない」という気持ちもありましたが、慣れてくるとそれはそれで問題なく、今や何の違和感もなくなりました。飲食店に限らず人手不足に悩む企業は多いかと思いますが、それを補完する形でAI技術が発展しているので、ビジネスにおいてはAI化を受け入れないという選択肢はないでしょうね。労働の形態が刻々と変化している実感があります。
そして、AI化の進行は、不足労働力の補完という単純な構図には留まらないようです。次のステップとしてBI(ベーシックインカム)の議論もちらほらと出てきました。この概念が登場したのは18世紀ですが、ここにきて再度注目されています。それは、格差問題に見られる資本主義の限界、社会保障の行き詰まり等の問題に加えて、「AIによって人間が仕事を奪われる」という恐怖が現実味を帯びてきたということでしょうね。
ベーシックインカムとは、年齢や性別を問わず全ての国民に、無条件で、ある一定の現金を一律(同じ金額)で定期的に付与する仕組みです。無条件なので、個人の職業や、収入、失業中であるか在職しているかといったことは関係ありません。この制度においては、「すべての国民が衣食住において最低限の生活を営むことを保障すること」が目的とされています。現状でも失業保険や子育て支援、年金、生活保護など数多くの生活保障制度が存在しますが、ベーシックインカムが導入されると、これらの保障は廃止されてベーシックインカムに一本化されるのです。
賛否両論あるこの制度ですが、無条件で一定の現金を支給してしまうと、人間は一体どうなるのでしょうか。勤労意欲を失って働かなくなるという意見もあれば、生活のために労働する必要がなくなりむしろやりたいことに集中できるという意見もあり、ブラック企業なんかは消滅するのでは?とも言われています。なにしろ未知の世界なので、国家としては昨年からフィンランドが初めて導入し、社会実験を行っているところです。メリット・デメリット両方あり、財源という大きな課題はありますが、日本においてもそう遠くない将来に選択肢の一つとなってきそうな気がします。それだけ、AIの存在がこの20年のうちに大きくなる、そう思っています。
ベーシックインカム議論は、単なる国の制度だけの話ではなく、「はたらく」という人間の在り方の根本を揺さぶっています。もはや「働き方改革」を通り越して「生き方改革」ですね。どういう形にせよ、いつかそんな時代が必ずやってきます。ジョン・レノンではないですが、想像してみて下さい、働かなくても最低限の収入がある生活を。その時、皆さんはどんな生き方をされますか。そうなって初めて、本当の自分の人生を歩めるのかもしれません。私は、、、それでも、どんな形でもいいから、働いていたいなあ。
大阪支店長 吉村 徳男