会社などの組織ではメンバーひとりひとりに仕事(=役割)が与えられており、ほとんどのメンバーは評価対象となっているその仕事だけをこなして帰宅していきます。もちろん与えられた分をしっかりとこなしてくれているのであれば問題ないといえるのですが、それだけでは十分ではないということは皆さんならなんとなく肌感覚でお分かり頂けるのではないでしょうか。

 組織市民行動という言葉があります。

「割り当てられた業務ではないため、評価には直結しないが組織の成長をもたらす行動のこと」です。例えば、従業員の親睦を深めるようなイベントを企画したり、直接の部下ではない人にも仕事を教えてあげたり、上司の指示の下で機動的に動くような一体感を醸成したりといったものが考えられますね。あるいはオフィスに落ちているゴミをそっと拾っておくことや、ムードメーカーとして組織の雰囲気を明るくするのもそうでしょう。

 そうした組織市民行動は、往々にして評価には直結しないものなので、皆あまり積極的に関わろうとはしません。しかしそのような組織市民行動の有無が、その組織の業績や生産性、ひいては離職率にまで大きく影響を及ぼすことが知られています。

 では多くのメンバーに組織市民行動を取ってもらうためにはどのようにすればよいのでしょうか。

 いろいろなやり方があるとは思うのですが(思い切って評価項目に入れてしまうのもひとつです)、メンバーひとりひとりの動きを普段からよく観察し、組織市民行動的な動きに対してはすかさず褒める。その日陰の仕事をやってくれた彼(彼女)にスポットライトを当てる。そういう動きこそが組織のためになっていることを伝えて感謝の気持ちを伝える。

 マネージャーや上司の方のそういった対応が、メンバーひとりひとりの組織市民行動を促していくのではないかと思います。特に感謝の気持ちを伝えるというのは、なかなか照れくさくて難しいかもしれません。しかし感謝の気持ちは思っているだけではなかなか上手く伝わりません。さあ、思い切って言葉にしてみましょう。デメリットなんてどこにもないのですから。

 

兵庫支店長 増尾 倫能