経営者の考え方は十人十色。長年の経験で培った直感で物事を考え経営判断される方もいれば、社内の意見に耳を傾け調和を図りつつ経営判断を示す方もいます。この経営判断方法に正解はなく、経営判断が正しかったかどうかの答え合わせは未来でしかできません。経営判断は正しかった、と言えるようにするためには、結果に至るまでの過程が極めて重要です。
結果が残せている企業というのは、過程の在り方が抜群だと見ています。経営者の考えが従業員に浸透しているので、過程に無駄がないというか、見ている着地点・見えている未来が同じだというように感じます。これとは逆に、経営者の考えが従業員に浸透していない場合、過程にぶれが生じてしまい逸失機会を自ら作ってしまうということにも繋がりかねません。
冒頭に述べた直感型。直観力により成功された方は、従業員から尊敬の眼差しというか「社長が言われているから大丈夫だろう、信じて頑張ろう」という安心感を与えることができます。ただし、少しでも歪みが出てしまうと「またこんなこと言っているけど大丈夫なのか…」と不安にさせてしまうことが潜在的リスクです。
対して調和型。「社長が我々の意見を聞いてくれる、これに報いて頑張ろう」という一体感を与えることができます。ただし、こちらも歪みが出てしまうと「社長は自分で何も決められない…」と不安にさせてしまうことが潜在的リスクです。
どれも一長一短があるわけですが、方針転換を図ることができれば問題ありません。
私が十数年お付き合いをしている剛腕型の社長。従業員の意見を聞く耳は持ち合わせておらず、売上・利益は好調でも社内の雰囲気は良いとは言えないという状況でした。そんな社長が、つい先日の幹部会議で初めて頭を下げたということを労務管理担当役員の方からお聞きする機会がありました。このことにより社内の雰囲気が一気に変わり、「社長にこんなことをさせてはいけない」「社長も我々を考えてくれているんだ」と思うようになり、社内の雰囲気が急激に変わったとのこと。非を認め方針転換。簡単なようですが、経営者にとっては勇気がいる決断です。ですがこの決断により企業・経営者・従業員が前を向けたことは間違いないでしょう。
非を認めたことが素晴らしい、ということでなくて、従業員に対してお考え・お気持ちを吐き出せたことがすごいと個人的に思った次第です。私も福岡支店を預かる身として、深く考えさせられた事案でした。
福岡支店長 木村 和人