様々な経営者の方々のお悩みの中でも特に多いのが人材育成の問題です。曰く「いつまで経っても技術が向上しない」「自分で考えて動かない」「あまり欲が感じられない」等、挙げていけばキリがありません。いろいろと工夫して育てようという気持ちはあるのですが、打っても響かない部下たちの姿を見て、うちの従業員たちはひとつも成長しないなあ…と嘆くのです。

 組織は人が育った分しか成長しない。そんな風によく言われます。だからこそ、人を育てないといけない。しかし上手くいかない。そうですね。わかります。私もこれまで様々な経営者やリーダー、マネージャー等の組織のトップの方々に、「部下の育て方」についての話を聞いてきました。すると人材育成に成功している方に共通しているのは、決して見返りを求めない姿勢です。

 相手の為に何かをするとなるとつい見返りを求めてしまいがちです。部下のためにやった行動に対するつれない反応に腹が立ったり、悲しくなったりしまうものですよね。

 でもはじめから部下に見返りを求めなければ、部下の態度や反応がどうであれ、部下のためを思って頑張るだけ。それが出来るようになると不思議と部下の態度もずいぶん変わり、会社のことを考えて積極的に動いてくれるようになったというお話も聞きます。

 その昔、かの勝海舟は任侠世界の大親分である清水次郎長に対してこう聞いたそうです。
「お前のために命を捨てる子分が何人おるかえ?」

 清水次郎長の答えはこうです。
「一人もおりません。ですが、自分はあやつらのために命を投げ出せます」

 部下を持ち、育てていく覚悟。
 そのためには見返りを求めず、部下の為に犠牲を払う覚悟。

 そんな風に自分自身が変わることが、人材育成の本当の第一歩なのかもしれません。

 

兵庫支店長 増尾 倫能