昨今、様々な場面で組織マネジメントの手法として1on1ミーティングが注目され、実際の導入している企業や組織もずいぶん増えてきましたね。我々神戸支店でも約1年半前から1on1をスタートしているのですが、今日はそのお話をしたいと思います。
私達が1on1を導入するに至った経緯からご紹介しましょう。そもそも組織の成長のために何が必要かを考えたとき、まず「上司と部下それぞれの個人が成長しなければ組織が成長しない」という出発点に立ちました。次に個人の成長を促進するためにはと考えた時に必要なもの・やリ方は何だろうかと考えた結果、それは経験学習サイクルの促進だということに辿り着いたのです。
経験学習サイクルについてここでは詳しく触れませんが、ざっくり要約すると、他人からのアドバイスや研修、書籍からの学びよりも、実際に自分が経験から得られる学びの方が、社会人の学び方として一番影響力があるという研究結果に基づき、「実際の具体的な経験をし、それを振り返り、経験を多面的にとらえて教訓を引き出し、行動を修正して挑戦する」というサイクルを繰り返すことによって個人の成長に大きく寄与するという考え方です。その経験学習サイクルを効果的に回していくための場として1on1が最適なのではないか、という風に考えたわけです。
1on1という新しい取り組みを始めるにあたって、私からメンバー(部下)に対して2つの約束をしました。ひとつ目は、1on1の内容は評価と結び付けないこと。だからどんなことだって良いので何でも話したいことをどうか話して欲しいと伝えました。そしてふたつ目は、1on1の中でメンバーが何か期限を設定した場合で、期限内に達成しなかったとしても、その理由を確認した上で改善対策を一緒に講じることはしても、期限内にできなかったことについて責めることは決してしないこと、です。その約束がなければ言いたいことが言えずに萎縮してしまったり、伸び伸びとチャレンジができる雰囲気を作ることはできないと考えたのです。
さて、私にとってもメンバーたちにとっても今までに経験したことのない1on1という取り組みに初めのうちは私もメンバーも、手探り状態のまま、だいたい2週に1回、1回あたり45分から1時間程度の1on1をスタートしました。テーマは全くの自由。メンバーたちが話したいことを話します。仕事の進め方や組織の方針、後輩の指導方法、人間関係はもちろんプライベートな話題までその内容は幅が広いものとなります。そんな中私が心がけてきたのは、とにかく1on1は「自分のための場所ではなくメンバーのための場所である」ということを忘れないことです。経験学習を促進するためには、メンバー自身の経験から、教訓を学びとり、それを自分自身で次に活かす必要がありますが、つい先回りして具体的なアクションを指示したくなったり、初めから正解を与えてしまいそうになったり、ということが頻繁に発生してしまいます。そこをぐっとこらえてメンバーが自分で考えるそのサポート役に徹すること、これが本当に難しい。限られた時間の中で眼の前の課題を解決しなければならないこともあり、そういった場合は最短距離で解決方法を提示して一緒に取り組む、などの臨機応変な対応も必要だとは思いますが、それでも1on1は「自分のための場所ではなくメンバーのための場所である」ことを忘れないようにする必要があります。
今ではようやく、時にお互いの感情をさらけ出しながらまっすぐに意見を交わしあったり、あふれる想いに感極まって涙を流しながら慎重に言葉を選んだり…と、普段の忙しい毎日の業務の中でだけでは到底実現できない、私とメンバーたちとの貴重な対話の時間になっています。そして、1on1を通じて成長しているのは何もメンバーだけではありません。私もメンバーとの「より良い対話」をするため、普段の在り方から見直す必要があり、自分とはいったいどのような存在であるべきかを考え学び続けています。
1on1をスタートして1年半、概ね好意的に受け入れられておりメンバーたちも目覚ましい成長を見せてくれていますが、まだまだ1on1の、そしてメンバーたちの可能性はこんなもんじゃない。私も彼ら/彼女らに負けないようにこの仕組みをより良いものに洗練しつつ、組織と個人の成長に寄与していきたいと考えています。
神戸支店長 増尾 倫能