先日、岸田首相が実施した内閣改造で、女性閣僚は首相を含む20人のうち5人となり過去最多タイとなりました。改造前の2人から大幅に引き上げることで女性活躍に取り組む姿勢を打ち出そうという狙いがあるようにもみえますが、すでに世界では男女同数内閣の国も増えているなかで、3割以上という一つの大きな国際標準をいまだクリアできないのは日本の大きな課題であると言えます。
この3割以上という基準にはどんな意味があるかご存知でしょうか。これはクリティカルマスと呼ばれているもので、周囲に影響を与えるには一定程度の比率が重要で、その比率がだいたい3割くらいといわれています。つまり、女性リーダーがその資質を発揮するためには、一定数以上の女性がいる環境が重要であるということです。
政治に限らずビジネスの世界でも女性の管理職比率を高めようと女性活躍推進法の改正や助成金の拡充を図り国をあげて取り組んでいますが、このクリティカルマスの法則をあてはめて考えると管理職の比率だけを3割以上にしても効果は期待できないということになります。
クリティカルマスの考え方として、そもそもの人数が少な過ぎるとその組織の女性リーダーは象徴化されてしまい、その女性リーダーが発言したことを、まわりの男性は「これが女性の考えなのだ」と一般化して捉えてしまい、女性の中でも一人ひとりまったく違う考えを持っているのに「女性とはこういうものだ」という誤解が生まれてしまうのです。また、象徴化されてしまう女性リーダーも、自分が女性全体を代表しているというプレッシャーを必要以上に感じることで、本来のパフォーマンスを発揮することができないとも言われています。
このように女性リーダーがその資質を存分に発揮するには、管理職だけでなく組織全体として一定数の女性比率の確保が大前提となります。これは女性活躍に限った話ではなく、組織に多様性を求めるなら年齢やスキル、人物タイプなど様々な角度から組織の人員構成を分析し採用や配置を検討する必要があるということになります。
採用選考をしているとついつい社内で活躍している社員に照らし合わせて似たタイプの人材に目がいきがちですが、広く多角的な視点から今後必要となる人材を見極められる目を養っていきたいと思う今日この頃です。
東京支店長 白倉 玄