複数ある年収の壁のうち、「130万円の壁」は健康保険の被扶養者および国民年金第3号被保険者の壁であり、年収130万円(※)以上となることで、国民健康保険および国民年金の保険料の支払いが生じ、手取り収入が減ってしまうというものです。これまでも年収の壁への課題認識はあったものの、最低賃金の大幅な引上げにより就業調整の問題が大きくなり、年収の壁の存在がこれまで以上にクローズアップされています。今回、その対策として被扶養者認定の円滑化が行われることになりました。
※認定・確認対象者が60歳以上または一定の障害者の場合は180万円
[1]130万円の壁への対応
130万円の年収の壁については、被扶養者の収入が一時的に増加した場合に、すぐに被扶養者から外すことのないように、厚生労働省から被用者保険の保険者に通知がされていました。ただし、雇用契約書等の書類の提出が求められるなど、認定や資格確認に多くの時間を要することもありました。
そこで今回、パートタイマーやアルバイト等が繁忙期に労働時間を延ばすことなどにより、収入が一時的に増加したとしても、事業主がその旨を証明することで、認定や資格確認が円滑に進む仕組みが設けられました。
[2]一時的な収入の増加
一時的な収入増加とは、主に時間外勤務手当や臨時的に支払われる繁忙手当等が支給されたことが想定されています。主なケースとしては、以下が示されています。
- ・他の従業員が退職したため、労働者の業務量が増加した
- ・他の従業員が休職したため、労働者の業務量が増加した
- ・業務の受注が好調だったことにより、会社全体の業務量が増加した
- ・突発的な大口案件により、会社全体の業務量が増加した
ただし、基本給が上がった場合や、恒常的に支給される手当が新設された場合など、引き続き収入が増えることが確実な場合は、一時的な収入増加とは認められません。
[3]事業主が行う証明
被扶養者については、新たに被扶養者の認定を受ける際や被用者保険の保険者が被扶養者の資格確認を行う際に年間収入が確認されます。このタイミングで、被扶養者が勤務する会社で一時的な収入変動である旨の証明(厚生労働省から様式の公開あり)を発行してもらい、被保険者である家族が勤務している会社を通じて各被用者保険の保険者に対して、通常提出が求められる書類と併せて、この事業主の証明を提出することになります。
このため、各被用者保険の保険者が行う被扶養者の資格確認のタイミング等に合わせて、被扶養者の勤務する事業主から一時的な収入増加である旨の証明を取得することになります。
最終的な被扶養者の認定や資格確認の判断は、被用者保険の保険者が行うことになります。事業主の証明があれば必ず認められるとは限りませんので、運用する際には十分な注意が必要になります。なお、事業主の証明で認められるのは連続2回までとされています。
■参考リンク
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。