「働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現」を目指して始まった働き方改革も、早いもので施行から5年が経過しました。その間、コロナの影響もあってテレワーク(リモートワーク)が急速に広まりましたが、コロナが5類感染症に分類されて以降、フルリモート勤務者に対して出社を命じる企業が増えてきました。多様な働き方が求められる現代において、テレワークはその代表と位置付けられていたにも関わらず、出社回帰という相反する流れに傾きつつあると言えます。
働き方改革の目的の一つに「生産性の向上」があります。従業員が多様な働き方を選択できたとしても、出社に比べて生産性が落ちてしまっては意味がありません。テレワークは、通勤からの解放やワーク・ライフ・バランスの改善など、従業員のモチベーションアップに繋がる側面もあります。また、資料作りに没頭する日などには、まさに最高の環境と言えるでしょう。そういったメリットがあるにも関わらず、フルリモート、またはそれに近い運用を行っている企業が出社回帰に向かっているのは、テレワークによって生産性が落ちた(または上がらなかった)と総合的に判断していることがうかがえます。
ちなみに、協心では、週に1回に限り希望すればテレワークができる運用にしています。「出社して仕事を行う以上のパフォーマンス」が出せているかというと、必ずしもそうではない気がします。しかし、その日だけではなく月単位で見た場合に、週に1回のテレワークがもたらすメリット(総合的に見た生産性の向上)はあるのではないかとも思います。
さらに協心では、フレックスタイム制の導入に向けて、まずは試験運用を開始すべく現在準備を進めています。多様な働き方が求められる現代において、フレックスタイム制も協心にとって必要な制度となり得る。そんな思いを巡らせています。
一般的にフレックスタイム制というと、働く時間を従業員個人の裁量で自由に決められる制度というイメージがあり、もたらされる効果としては、通勤時間の分散、仕事とプライベートの両立、業務の効率化、離職率の低減、採用ブランディングの向上などが挙げられます。しかし、これらはあくまで効果であり、本質的な目的とは異なることを理解しておく必要があります。
協心におけるフレックスタイム制導入の本質的な目的は、まさに「生産性の向上」で、そのためには、各個人のセルフマネジメントスキルの向上と管理者のマネジメントスキルの向上が絶対条件となります。その意味でも、フレックスタイム制のもとで業務を遂行するにあたり、組織全体で意識して取り組んでいかなければならない課題だと捉えています。
フレックスタイム制の導入は、単なる働き方改革の一環に留まらず、多様な働き方かつ柔軟な労働環境の設定において、いかに生産性を上げていくかという、言わば組織の未来を見据えた戦略的な取り組みと言えます。現状テレワークは希望者だけの制度ですが、フレックスタイム制は多くのメンバーに適用することになるでしょう。そのためにも、これらの真の目的を組織に浸透させることがなによりも第一に行わねばならない重要なタスクだと考えます。
労働力人口が減少の一途を辿ることは確定しています。これまでと同じやり方では事業の継続は困難でしょう。たとえ願わずとも、多様な働き方を推進していくことが求められる時代になりました。そうであるなら、単に制度の導入に留まらず、さらには事業の「継続」ではなく「成長と発展」を目指したいですね。我々と一緒により良い働き方を実現していきましょう。
福岡支店長 城戸 康行