先月、厚生労働省より「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」の集計結果(以下、「集計結果」という)が公表されました。個別労働紛争解決制度とは、個々の労働者と事業主との間の労働に関する紛争について実情に即した迅速かつ適正な解決を図るためのものであり、具体的には、(1)都道府県労働局内や労働基準監督署内に設置された総合労働相談コーナーでの総合労働相談、(2)都道府県労働局長の助言・指導制度、(3)紛争調整委員会のあっせん制度の3つの仕組みがあります。
[1]集計結果の内容
今回の集計結果をみると、令和5年度に寄せられた総合労働相談件数は1,210,400件と4年連続で120万件を超え、高止まりの状態となっています。
また、労働基準法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げ等のいわゆる民事上の個別労働紛争に関する相談件数の推移をグラフ化したのが下図※になります。内容別で見ると、トップは「いじめ・嫌がらせ」に関する相談の122,976件で、不動の首位となっています(図はクリックで拡大されます)。
※2022年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行に伴い、これまで「いじめ・嫌がらせ」に含まれていた同法上のパワーハラスメントに関する相談は全て別途集計することとなされたため、労働施策総合推進法に関するパワーハラスメントの相談件数(2022年は50,840件、2023年は62,863件)を加えています。
[2]パワーハラスメントの実態と防止措置
「いじめ・嫌がらせ」は、パワーハラスメントの一類型となりますが、2024年5月に公表された令和5年度厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書によると、過去3年間に勤務先で受けたハラスメントとしては、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為の中では、パワーハラスメントが19.3%ともっとも多く、次いで顧客等からの著しい迷惑行為が10.8%、セクシュアルハラスメントが6.3%となっています。
受けたパワーハラスメントの内容については、「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」が48.5%ともっとも多くなっています。パワーハラスメントの防止対策のため、社内で研修を実施することがありますが、例えば「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)」との指摘を受けることなくコミュニケーションを図るため、どのように注意すべきかを具体的に解説して、受講する従業員に理解してもらうとよいでしょう。
そもそも労働トラブルに発展させないための、予防的な労務管理が重要になってきます。取り組む際に何かお困りごとがございましたら早めに当事務所までご連絡ください。
■参考リンク
厚生労働省「「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します」
厚生労働省「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について」
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。