近年の温暖化による猛暑は、私たちの日常生活だけでなく、職場環境にも大きな影響を与えています。特に夏場の暑さは、労働者のパフォーマンス低下を招くだけでなく、健康への悪影響や生産性の低下にもつながります。こうした課題に対し、国内外で様々な対策が講じられており、その取り組みには学ぶべき点が多いと感じます。
たとえば、スペインでは猛暑による効率低下を防ぐために、伝統的な「シエスタ」を現代の働き方に応用する動きがあります。昼休みを長めに取り、早朝や夕方の涼しい時間帯に勤務をシフトすることで、暑さのピークを避ける工夫がなされています。日本の働き方改革とも親和性が高い柔軟な勤務時間の設定は、注目すべきアイデアかもしれません。
アメリカでは猛暑時に、オフィス内に特に涼しい空間を設ける「クールルーム」が活用されています。従業員が短時間でも体温を下げてリフレッシュできるこの仕組みは、猛暑による倦怠感を防ぐ効果があり、日本でも簡易的な休憩スペースや冷却ゾーンとして応用できる取り組みと言えます。
また、シンガポールでは「冷却シート」や「小型冷却器」を活用し、デスクワーク中心の職場において、個別冷却技術を活用することで、従業員が快適に作業できる環境づくりへの取り組み事例が増えていて、比較的低コストで導入できる点も魅力的です。
日本では「クールビズ」が定着し、軽装での勤務が当たり前になりましたが、最近では、冷却ファン付きジャケットやライトワークデー(軽めの業務を行う日)の導入、猛暑時のリモートワークの推奨など、企業ごとにユニークなアイデアも広まってきています。
猛暑対策は企業の生産性向上に大きく影響する重要な課題で、猛暑がますます厳しくなる中で、職場環境を改善するための新たなアイデアや柔軟な取組みは今後ますます求められます。諸外国の事例を参考にしながら、自社でも採り入れられるアイデアをぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
東京オフィス所長 白倉 玄