先月実施された参議院選挙。開票日が近づくにつれて、外国人労働者の受け入れに関する論争が激しく展開されていたことが印象深かった選挙となりました。

 この外国人労働者の受け入れ。私としては以前にも増して、「初めて外国人を雇用しようと思っていますが、どのような点に気をつけたらよいでしょうか?」といった趣旨の質問を受ける機会が多くなっている気がします。

 厚生労働省の『外国人雇用状況の届出状況』によれば、令和6年10月末時点で日本で働く外国人労働者の数は約230万人に達し、前年同期比で12.4%増加しました。これは、外国人労働者の受け入れを促進してきた背景に加え、少子高齢化による深刻な労働力不足が影響していると考えられます。特に製造業やサービス業などの分野で活躍されていますが、外国人が働く上で直面する課題も多く、制度的な改善が求められているのが現状です。

 外国人労働者を受け入れる一方で、文化や言語の違いから生じるコミュニケーションの問題も無視できません。特に職場におけるトラブルや誤解が、労働環境の悪化や離職につながるケースもあります。厚生労働省の『令和5年外国人雇用実態調査』によれば、外国人労働者の約40%が「職場でのコミュニケーションが難しい」と回答しており、その結果、職場での孤立やストレスが生じる原因となっています。日本独特の「暗黙の了解」や「空気を読む」という文化が外国人労働者にとってわかりにくくさせているのかもしれませんね。こうした課題に対処するためには、日本語教育を充実させ、異文化理解を深める機会を設けることが欠かせないかと思います。受け入れる企業側も、外国人労働者が働きやすい環境を整え、彼らの声に耳を傾ける努力が求められます。

 また、外国人労働者に関する法的な問題も注目されています。例えば、労働基準法や最低賃金法が適用されるのは当然のことですが、実際にはこれらの法律が徹底されていないケースもあります。一部の悪質な雇用主による不当な扱いや賃金未払いの問題が報告されており、外国人労働者が適切な法的保護を受けられるよう、監督体制の強化が必要です。

 最初の話に戻りますが、参議院選挙での議論を通じて明らかになったのは、外国人労働者の受け入れが単なる経済政策ではなく、社会全体を巻き込む重要なテーマであるということ。外国人労働者を単なる「労働力」としてではなく、「日本社会を支える共に働く仲間」として位置づける視点が求められています。そのためにも、今の時代に合ったものへと、受け入れルールの整備や見直しが必要不可欠と言えるのではないでしょうか。

大阪オフィス所長 東 武志