働き方や価値観が大きく変化する時代を生きる私たちは、日々さまざまな課題に向き合っています。成果を求められながらも人としての温かさや誠実さを忘れずに働くことは、決して容易ではありません。そんな中、何が人を動かすのか。どうすれば自分らしく働き続けられるのか。最近よくそんなことを考えます。

 誰もがそれぞれの持ち場で懸命に働いています。忙しさや変化の波にさらされながらも自分の仕事に誠実に向き合い、誰かの役に立とうとする姿を見ていると本当に頭が下がります。その一方で、頑張っているのに結果が出ないことや、思うように力を発揮できないこともあります。そんな日々の中でふと「人を動かす原動力とは何だろう」と考えることがあります。モチベーションや目標、使命感――さまざまな言葉がありますが、私自身が一番しっくりくるのは「責任感」という言葉です。

 責任感というとどこか重たく堅い印象があります。しかしその本質は意外とやさしいものではないでしょうか。自分の内側から「こうありたい」と思う気持ち。誰かに言われたからではなく自分でそうしたいと思える心の動き。それが私の中での責任感の出発点です。ただ、人はいつも強くいられるわけではありません。頭ではわかっていても思うように進めない日もありますし、努力が報われないことだってあります。そんなとき再び前を向かせてくれるのは、自分の外側から届く小さな刺激だったりします。

 仲間が懸命に働く姿や信頼して任せてくれる人の存在、あるいは誰かの何気ない言葉。そうした周囲の力が自分の中の責任感をもう一度灯し直してくれることがあります。責任感とは本来自分の中にあるものですが、他者との関わりの中で絶えず育ち続けるものでもあるように思います。義務感として背負うのではなく「自分を信じてくれる人がいる」「その期待に応えたい」と思えるとき、それはもう少しあたたかく、やさしい感情として心に残るものです。誰かのために頑張ることが結果的に自分の成長につながっていくということも少なくありません。

 それでも、ときに心が重く感じられる瞬間もあります。思うような成果が出ずに落ち込むことや、周囲の期待に応えられず自分を責めてしまうこともあるでしょう。それでも、そうした経験のひとつひとつが自分を少しずつ成長させていくのだと思います。うまくいかないことを恐れず、今できることを丁寧に積み重ねていく。その過程で見えるものがあり、積み重ねの先に生まれる小さな自信が次の行動を支えていくのではないでしょうか。

 責任感は決して堅苦しいものではありません。むしろ人の内側にあるやさしい温度を持った力です。自分の中に灯った小さな火を大切にしながら、時に外からの風を受けてまた燃え上がる。そんな往復の中で人は育ち、組織は少しずつ前へと進んでいくのだと思います。

福岡オフィス所長 城戸 康行