厚生労働省は昨年11月に「過重労働解消キャンペーン」として労働基準監督署による重点監督などを実施しましたが、先月この実施結果が取りまとめられ、公表されました。そこで今回は、労働基準監督署の調査におけるポイントを理解するという意味から、この実施結果の内容を確認しておきましょう。
昨年の重点監督は、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や、若者の「使い捨て」が疑われる事業場など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して集中的に実施されました。その結果を見てみると、重点監督の実施対象となった9,120事業場のうち6,553事業場(全体の71.9%)において労働基準関係法令違反が指摘されました。その主な違反内容は以下のとおりとなっています。1.違法な時間外労働があったもの: 2,807 事業場(30.8%)
2.賃金不払残業があったもの:478 事業場(5.2%)
3.過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:1,829 事業場(20.1%)
違法な時間外労働があったものに関しては、前年度の件数を見てみると3,602事業場(40.5%)であり、大幅に減少しています。これは2020年4月より中小企業についても時間外労働の上限規制が適用され、法令遵守の意識が高まったこと、新型コロナの影響でそもそも労働時間が減少した事業場が多いこと背景にあるのではないかと考えられます。
[2]労働時間の適正な把握に関する指導状況
監督指導を実施した事業場のうち、1,528事業場に対して、労働時間の把握が不適正であるため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導が行われています。その内容は以下のようになっています。
・始業・終業時刻の確認・記録:958事業場
・自己申告制の説明:73事業場
・実態調査の実施:615事業場
・適正な申告の阻害要因の排除:62事業場
・管理者の職務:27事業場
・労使協議組織の活用:7事業場
※指導事項は、複数の場合、それぞれに計上されている。
指導事項の多かった始業・終業時刻の確認・記録とは、従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録することであり、労働時間を把握するための大前提のことができていないとして、指導が行われています。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、在宅勤務を行う中でシステム環境等の問題から始業・終業時刻の確認・記録ができていないケースもあるでしょう。このような場合であっても、始業・終業時刻の確認・記録が求められています。適正な管理を行えるよう、早急に対応を検討しましょう。
■参考リンク
厚生労働省「令和2年度11月「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18389.html
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。