2019年4月より、年10日以上の年次有給休暇(以下、「年休」という)が付与される従業員について、付与された年休の日数のうち5日は会社が時季を指定するなどして取得させることが義務となりました。そのため、付与日から四半期や半期を経過したタイミング等で、取得状況の確認をしている企業も多いのではないでしょうか。今回はこの年休の取得義務に関連し、よくある質問をとり上げます。

 

[1]私傷病により休職している従業員の対応
 年休は労働日に取得ができ、また取得させるものですが、休職は、本来の労働日について労働義務が免除される取り扱いです。付与日以前から休職をしていて、付与日から1年間のすべてが休職となっていた(1年間の途中一度も復帰しなかった)場合は、そもそも労働日がなく、会社にとって年休を取得させることが不可能であるため、5日の取得ができないとしても法違反に問われるものではありません。

 

[2]育児休業中の従業員の対応
 育児休業も、休職と同様に休業を申し出た期間について労働義務が免除されるため、付与日から1年間のすべてについて、育児休業を取得しているようなときは、1.と同様の考え方になります。
 ただし、付与日から1年経過する途中に育児休業から復帰した従業員は年休の取得義務の対象になります。その際、復帰した日から付与日から1年経過する日までにある労働日が、取得義務となっている年休の日数より少なく、年5日の年休を取得させることができないときは、取得できなくてもやむを得ないこととなります。
 実務の場面では例えば、付与日から1年経過する日が3月31日であり、3月16日に復帰する従業員がいるときには、3月16日から3月31日までの期間に合計して年5日の年休を取得させなければならないようなケースが発生します。このように年休の付与日から1年経過する日と復帰日が隣接しているような場合であっても、年5日取得できる労働日があるのであれば、取得させる義務があります。復帰にあたっては年休の取得日も併せて確認しておくべきでしょう。

 

[3]パートタイマーから正社員に転換した従業員の対応
 年10日以上の年休が付与されているパートタイマーについても、付与日から1年以内に5日の年休を取得させる義務があります。このパートタイマーが正社員に転換した場合は、年休の残日数を引継ぎ、取得義務も継続します。
 正社員に転換する際に、例えば、パートタイマーのときには10月1日であった付与日を、正社員については統一付与日である4月1日に前倒しして変更することがあります。このような場合、年5日の取得義務について、パートタイマーの期間と正社員の期間について、重複が生じることになりますが、パートタイマーおよび正社員の期間それぞれで取得させることが原則になります。なお、重複が生じるそれぞれの期間を通じた期間の長さに応じた日数(比例按分した日数)をその期間に取得させることも認められています。

 

 上記事例の他、管理監督者も年休の付与義務の対象となっています。日常的に多忙で年休を取得する余裕がないという管理監督者の声を耳にすることがありますが、取得義務の期限が迫って、業務に支障を来すことがないように、計画的に取得できるようにしましょう。

 

■参考リンク
厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。