バッターボックスに立って、バットを立ててスタンド方向へ腕を伸ばし、袖を少し捲る……

 

 この文面を見て、野球ファンはともかく、大半の方がイチロー選手のバッターボックスシーンを思い出すのではないでしょうか。これはイチロー選手のルーティンです。

 

 これ以外にも、毎日カレーを食べるとか、同じスペックのバットを使い続けるなどがありますが、単純に理由なく行っていたのではなく、意図あってのこと。如何にしてストレスのない状態をつくりだすかということが念頭にあったようです。

 

 確かに、一定の決まったことを継続するということは変化が起きない状態をつくりだし、自然とストレスは軽減されます。いい意味でも悪い意味でも、変化はストレスを生み出しますので。イチロー選手は強いストレスがかかる野球に集中するため、それ以外の生活ではできる限りのストレスをなくして、メンタルを安定させたいという思いがあったのかもしれません。

 

 私は、ほぼ毎日、昼食は外食です。いつも決まったお店に行って食事をし、終わった後はいつも決まったルートで散歩を行う。これが私の昼休みのルーティンです。大したことをしているわけではありませんが、私にとってはこの時間は重要なもの。音楽を聴きながら散歩するわけでもなく、ただぼーっと歩くことに集中…これがいいんです。

 

 ルーティンは基本的に同じことの繰り返しですので、変化にも気づきやすくなります。私の場合ですと、いつもはスムーズに歩けるのに今日は足取りが重い…とか、いつもはいいなと思える景色がそう思えなかったり…とか、心と身体の状態の変化により敏感になる気がします。

 

 そんなルーティンですが、ビジネス上ではどのように捉えられているでしょうか。

 

 決まりきったことを毎日行うという意味から、ルーティンワーク(定型業務)としての捉えられることが多く、どちらかといえばネガティブなイメージをもちやすいものです。ただ、その活用次第では効率性を上げ、生産性を高める可能性を秘めているとも言われています。

 

 その活用策の一つとして、モチベーションを高めるためのルーティンがあります。たとえば、終業1時間前からは翌日に持ち越す業務はしないということ。これはその日で業務に区切りをつけることでメンタルの安定に繋がります。如何にして気分を切り替えることができるかということですね。

 

 もう一つは、作業そのものを効率化するためのルーティンです。こちらは業務の工程をルーティン化させ、完全にマニュアルにまで落とし込みをします。考えて取り組むということは決して悪いことではありませんが、時間を要することに違いはなく、時にはその時間を排除させた方がよい業務も存在するからです。

 

 コロナ禍をきっかけとして我々のサービスが多角化していく中、メンバー間の連携はとりつつも、まだ属人的な業務というものも多く存在しています。今後、平準化を進めていく上で、業務のルーティン化は不可避であり、可能な限り実現させていきたいと考えています。そんな私ですが、自分にとっての有用なルーティンはこれからも探しつづけていきます。

 

大阪支店長 東 武志