この時期、人事部の皆さんは人事評価の準備でお忙しいのではないでしょうか。私も評価者として準備を進めていますが、評価をするうえで最近あらためて大切にしたいと思う能力があります。

 

 皆さんは、ポリバレントという言葉をご存じでしょうか。

 

 この言葉は、サッカー日本代表のイビチャ・オシム元監督が選手選考の時に使った言葉で、複数のポジションをフレキシブルにこなせる能力という意味です。それまでは、オールラウンダーな選手といったフレーズで表現されていましたが、どこか器用貧乏といった意味合いもあり、評価者によってその評価が分かれる印象がありました。

 

 皆さんも経験があるかと思いますが、突出した武器は評価しやすく、その特徴を活かした配置やリーダーといったポジションへの抜擢もしやすいのではないでしょうか。そうした結果、まずは特徴がハッキリした人材を配置した後に、全体的に不足や補強が必要となる箇所を補うようにポリバレントな人材を配置し、時として兼務といった型でポジションが決まっていくことがあり、その器用さが仇となりキャリアのステップに支障が生じることがあります。

 

 しかし、ポリバレントという能力が武器で特徴であると捉えることができれば、欠かすことができない人材として評価できるのではないでしょうか。

 

 現代のサッカーでは代表に選ばれる選手にはポリバレントな能力が求められます。当然、あるポジションで怪我人が出た時にチームとして対応できるようにマイナスを埋めるといった観点もありますが、ポリバレントな選手がいることでチームとしての戦い方に幅がもてるということが一番の理由です。

 

 企業活動においても似たようなことがあると思います。突然の病気や不慮の天災など交通機関がマヒして出社ができないなどよくあります。特に少人数の会社ではそれぞれが代わりの効かない仕事に従事している場合もあり、こういったケースでは企業活動を継続するにあたって大打撃となることがあります。

 

 そして何より、周りの環境変化が激しい現代において、その変化に組織としても柔軟に対応しなければなりません。数年先を想定して組織を構築していっても3年後、5年後には周りの環境がガラッと変わっているので、その時その時で変化への柔軟な対応が必要になります。その点で、組織に柔軟性をもたらし戦術の幅をもたらすポリバレントな人材は欠かすことのできない存在で、価値のある能力だと思う今日この頃です。

 

東京支店長 白倉 玄