「なぜあの人はそんなことをするのだろう」
「もっと〇〇してほしいのに(〇〇してくれない)」
「どうして分かってくれないのかな」

 

 職場の同僚、部下、上司、家族、友人…人と接していると相手に対して自分が期待していない行動や考え方に違和感や不安な気持ちになる場面が少なからず誰しもあるのではないかと思います。それらは育ってきた環境や今置かれている立場の違い、またこれまでの経験や価値観の違いによって物事の受け止め方や考え方が人によって異なることによります。人によって異なる物事の受け止め方や考え方を「準拠枠」といいます。

 

 主に心理学や社会学で使われるこの「準拠枠」という言葉ですが、その人にとっての「当たり前に感じる物事の受け止め方」と言い換えることもできるのではと思います。

 

 例えば、バスに乗ろうとバス停で待っている時を思い浮かべてください。予定されている時刻にバスが現れなかったら貴方はどう感じるでしょうか? 

 

 急いでいる時ならイライラするかもしれません。もしかすると早く出発してしまったのでは不安に思うかもしれません。もう少し早くバス停に来ていたらと後悔するかもしれません。急いでいない時であっても急いでいる時と同じように感じるかもしれませんし、そもそもバスが遅れていても何も感じないかもしれません。こうして考えると「バスが現れなかった」という状況に対して、いろいろな受け止め方や考え方がありますね。

 

 もし、同じバス停で他の人も待っていたら、その人は貴方と同じ受け止め方や考え方をしているでしょうか? 貴方は相手の事を知りません。 相手がどんな状況でバスを待っているのかわかりません。 自分と同じ受け止め方や考え方をしている、とは言い切れないでしょう。

 

 このように相手の「準拠枠」は自分にとっての「当たり前に感じる物事の受け止め方」とは異なるのです。また、どちらが正しいか間違っているかという概念もそこにはありません。

 

 もし、職場の同僚、部下、上司、家族、友人と話をしていて、

 

「なぜあの人はそんなことをするのだろう」
「もっと〇〇してほしいのに(〇〇してくれない)」
「どうして分かってくれないのかな」

 

と感じたのなら、この「準拠枠」の違いを意識してみるとよいかもしれません。相手にいくら自分の「準拠枠」を通して話を伝えても、相手との「準拠枠」が違うのですから、その話は正しく伝わっていない可能性があるということです。

 

 そんな時は、相手がどのように物事を受け止めているかを探る事や、相手を知ろうとしている姿勢を伝えてみましょう。さらに、自分自身の物事に対する受け止め方や考え方に偏りが無いか掘り下げて考えてみるのも良いでしょう。自身にとって当たり前に感じている事が、なぜ当たり前なのか、それは相手にとってはどうなのだろうかと探るのもいいですね。

 

 そうして自分と相手の「準拠枠」を尊重しながら歩み寄ることで周囲との円滑なコミュニケーションが生まれると私は考えています。

 

神戸支店長 春原 真起子