「もっと主体的に行動する社員になってほしい」と考える経営者は多いのではないでしょうか。なぜ人間は、良いと分かっていてもその行動を取れないのでしょう。一つの要因として、「みんなもやっていないから」という集団意識が働くからだとよく言われています。
人間は社会的な動物なので、自分の周囲の状況を敏感に感じ取り、同じ行動を取ろうとします。これは逆に言うと、周囲が望ましい行動を取っていれば、その行動を取る人が増えるということでもあるので、この心理を逆手にとって、最近では人事異動に公募制を取り入れる企業が増えてきています。
当然、公募制にしたからといってはじめから全員が自分のキャリア形成のためであったとしても主体性を持ってチャレンジするとは限りません。むしろ、新たな部署で一からチャレンジすると決断できる人の方が少ないのではないでしょうか。
それでもこうした自発的な公募制はある一定の効果を組織にもたらすのではないかと考えます。なぜなら、ある一定数の人は「みんなが手を挙げているから」という集団意識が良い意味で働くと思うからです。
まず、成長意欲やチャレンジ精神の高い人が手を挙げます。次に、その人たちをみたある一定数の人が私もやってみようかなと手を挙げます。そうなってくると、日頃あまり主体的に行動しない人も、手を挙げる不安よりも挙げない不安が大きくなってとりあえず手を挙げる行動を取るようになるといった具合です。集団の同調圧力のようなものが、望ましい方向に作用してくれるといったものです。
最初の動機はそれでも良いのではないでしょうか。入り口は「取り残されたくない」という気持ちだったとしても、自ら選択して抜擢されるという自発的に活動するプロセスを通じて徐々に主体性が育まれていくのではないかと思います。
ここで重要なのが、手をあげた人がイキイキしていて、私も手を挙げようかなと感じる状況をつくれるかどうかだと思います。当然、その役割を担っているのはリーダーや管理職の立場の人です。公募制に限らず、チャレンジした結果に対する評価より前に、チャレンジしたこと自体を歓迎し、主体性溢れる雰囲気や社風を創っていきたいと思う今日この頃です。
東京支店長 白倉 玄