私は本が…というより、本屋が好きです。他の小売店にはない、独特の雰囲気と本という印刷物の香り。私にとっては、ただそこに居るだけで、癒されるといっても過言ではありません。

 

 初めてアルバイトに応募したのも本屋。ただ、応募条件に年齢制限があることを完全に見逃していたため、残念ながら不採用になりました。ほろ苦いデビュー戦です。

 

 本屋ではここ10年で大きな変化が起きています。インターネットなどのデジタル媒体が世間に浸透し、書籍という存在が紙から電子に移行しつつあることで、売上が右肩下がりになっています。電子市場が成熟期に入ったという声を聞くこともあり、今後もこの流れは変わらないものと推測されます。

 

 そんな中でも実は売上をじわじわ伸ばしている分野の本があります。それは児童書です。その中でも特に目立つのが「絵本」になります。

 

 コロナ禍で家に居る時間が多くなり、本を読む機会が増えたことで、自然と絵本の売上も伸びましたが、それがコロナ特需で終わらず、現在に至るまで堅調さを保っているようです。

 

 そもそも絵本は既刊本の売上比率が圧倒的に高く、ロングセラーと呼ばれる作品が引き続き売れ続けているようです。確かに私が小さい頃に親に読んでもらった絵本が今でも店頭に並んでいます。あくまでも絵本は読者と購入者が異なるため、購入者である親が最終的に買うかどうか判断することもあり、他のジャンルとの購入判断の明確な違いがでています。そのロングセラー作品に加えて、近年では新刊の数も増え続けて、それがヒットすることで結果として絵本市場の拡大に繋がっているようです。

 

 かくいう私も小学生の子を持つ親であるため、絵本はいまだに購入しています。本屋に置かれた新刊を見ると明らかに大人を意識したものも多く、「これはぜひ見せたい」という気にさせられてしまいます。まさに作者が考える策にはまってしまった一人です。最近では、小学生が日常的に出くわすピンチを図鑑のように描いた絵本を買いましたが、これは親世代が見ても面白く、「そりゃヒットするだろうな」と納得のいく作品でした。

 

 新しくうまれるものと古くからあるもの。新しくうまれるものはその新しさを全面的に受け入れられることにより、爆発的に世間に広めることができます。ただ、それが長く続くかはわかりません。反対に古くからあるものはその価値を見出すことができれば、一時のものになりませんが、一部の人しか受け入れられないということもあります。

 

 今、絵本市場では、この二つの良い点がうまく融合されて成り立っている気がします。我々のサービスにおいても同様に、既存のものは強化しつつも、創り出した新しいものを単体で提供するだけでなく、既存のものと組み合わせるような、そんな展開を考えていく必要があります。

 

 我々のサービスが長きにわたって価値あるものとして認識し続けてもらうためにも、組織にとって何ができるのか、固定概念をなくして考えていきたいと思います。

 

大阪支店長 東 武志