社会を円滑に機能させるためには「常識」が欠かせません。しかし、この「常識」は一筋縄ではいかないものです。

 

 常識には大きく分けて二つの側面があります。一つは法的に定められた常識です。人を傷つけてはいけない、盗みをしてはいけないなど、基本的な倫理観や法的な規範に基づく常識です。これらは社会の基盤を成すものであり、誰もが守るべきルールです。しかし、もう一つの側面である個人の経験や価値観に基づく常識は、必ずしも誰にでも共通するものではありません。ここに人間関係の複雑さが生まれます。

 

 私たちが日々の生活や仕事の中で直面する衝突の多くは、この個人的な常識の違いによるものです。同じ状況においても、人それぞれが異なる背景や経験を持っているため、感じ方や判断は様々です。このため、意見の違いが生じるのは避けられません。

 

 では、こうした衝突をどのように乗り越えるべきでしょうか。最も重要なのは「共感」です。相手の立場に立ち、その視点から物事を見ようとする努力が必要です。ここで、共感の四つのステップが役立ちます。まずは相手の意見を拒絶せずに受け入れること。次に、それが自分にとってどのように見えるかを考えること。そして、相手の気持ちや背景を理解しようと努めること。最後に、必要に応じて自分の立場を見直し、相手に歩み寄ることです。

 

 共感は単に相手の意見を受け入れることではありません。それは深い理解と尊重から成り立つものです。相手の考え方や感じ方を尊重することで、初めて本当の意味での対話が可能になります。これはビジネスの現場においても非常に重要です。法律や規則だけでは解決できない問題が多々あります。そんな時にこそ、人間関係の柔軟性と温かさが求められるのです。

 

 私たちが他者とのコミュニケーションで直面する最大の課題は、自分の常識を他人に押し付けることなく、相手の常識を理解することです。これは簡単なことではありませんが、共感を持って接することで、お互いの違いを乗り越えることができるのではないでしょうか。

 

 例えば、あるプロジェクトで意見が対立したとしましょう。片方が予算の削減を主張し、もう片方が品質の向上を重視する場合、どちらが正しいかという単純な問題ではありません。双方の意見を尊重し、共感をもって対話を続けることで、より良い解決策が見つかるかもしれません。

 

 結論として、私たちが日常生活や仕事で直面する多くの問題は、共感をもって取り組むことで解決への道が開けます。法律や規則だけでは解決できない人間関係の問題において、共感と理解が鍵となるのです。これからの時代、私たちが求められるのは、共感の力を駆使して他者との絆を築くことです。それこそが、真の意味での「常識」と言えるのではないでしょうか。

 

 しかし、私もまだまだこの道の途中です。日々いろんな葛藤があり、すべての状況で共感を持って接することは決して簡単ではありませんが、この課題に取り組む中で少しずつでも成長し、他者との絆を深めていければと思います。

 

福岡支店長 城戸 康行