未来に基準を置く

支店長コラム

 日々、いろんな事業所を訪問させていただいていますが、最近ふと気付かされたことがあります。それは、業績を伸ばしている社長は「夢を語る」という共通項があるということです。もう少し突っ込んで言うと、大切なのは夢の内容というよりは時間軸の着眼点。つまり、「過去」ではなく「未来」を基準にして、「現在」行うべき行動を選択しています。

 Martin Heidegger(マルティン・ハイデッガー)というドイツの思想家をご存知でしょうか?「時間」を哲学する彼が遺した「未来が過去を決定し、現在を生成する」という言葉は、まさにそのことを言い表しています。過去が現在を決めるのではなく、未来というものを置くことによって過去が意味づけされ、現在が決まるということを言っています。

 つまり、過去とは「変えることのできない出来事」ではなく、「その人の記憶の中にある、起こった出来事に対する現在の解釈」に過ぎないということです。したがって、全く同じ出来事でも、現在や未来から見た評価によって、過去はいくらでも書き換えることが可能になります。過去の苦しかったことや悔しかったことも、現在や未来が変わると、感謝できたり笑い話になることがあります。これは、まさに未来が過去を変えたということです。

 しかし、大抵の人間の時間観は、「過去の積み重ねが未来をつくる」と認識しているため、現在や未来のことを考える時に、過去の記憶を基準にしてしまいます。一理はあるのですが、それでいくと判断基準がズレてしまい、今やるべき施策がブレてしまい、徐々に向かうべき方向と違う方向へと向かってしまいます。

 業績を伸ばしている社長は、現在の認識によっていくらでも解釈が変わる過去を基準にして、現在の状況を分析したり、未来を予想することはしません。ワクワクする夢をもって、未来から現在を見つめる事で、自分が思い描いた未来につながる情報を現状の世界の中から見出しています。目的を定めてからの逆算とでも言いましょうか。この着眼点が、成功する要諦の一つだと私は思います。

 ですから、何事も未来から現在を見つめることが大切ですね。そしてもし不遇な過去があれば、それは目指すべき未来へ向かうための不可欠な糧だったと書き換えましょう。そのためにも、夢を語ることが必要です。社長だけでなく、職員1人ひとりが夢を語りだせば、またそれぞれの夢を重ね合わせれば、その組織はもっと強くなる、そう思います。
 

大阪支店長 吉村 徳男