「テストで100点を取ったら、お小遣いをあげるからね!」親からこんな声をかけられたことはありませんか?小学生の頃によく友達が「ファミコンソフト買いたいから、今度のテスト頑張らなきゃ!」と言っていたのを覚えています。私は幸か不幸かそんな経験はありませんでしたが、お小遣いもらえるなんて羨ましいな~とよく思ったものです。

 しかし今では、子育てや教育にあたって「何らかのご褒美を提示して何かをやらせる」というのは基本的にNGだとされていますね。これは、「アンダーマイニング効果」が認識されだしたからではないでしょうか。

 アンダーマイニング効果とは、好奇心や喜びなど内発的動機付けを元に行なったことが、評価されてご褒美をもらえたりするなど外発的動機付けされることで、いつの間にかやる気がなくなるなどの内発的な行動に対するモチベーションが下がってしまうことです。

 最初の例でいうと、わざわざ「お小遣いをあげる」と提示したことで、報酬を手にする「ために」テストに取り組む人間にしてしまったということなのです。これがいかに本末転倒なことか、おわかりでしょうか。

 例でいうなら、勉強すること自体にモチベーションを持ってもらうことが、子育てや教育の本懐のはずです。しかし報酬をつけることで、むしろ「見返り」がなければ動かない人間を育ててしまうことになります。子どもに勉強の楽しさや意義を知ってもらうのは難しいことかもしれませんが、そこを度外視して「100点」という点数を求めている時点で、どこか本質を見誤っていますね。ちょっと昭和の匂いが漂っています…

 会社の人事評価制度を見ていても同様です。○○の成果を出せば、○○だけ給与が上がる-バブル期の高成長時代ならまだしも、低成長時代にこの制度が動機づけになるのか、甚だ疑問です。それに、見返りのためだけに働く人ばかりを増やしてしまう危険性があります。そんな会社が、長期的に見ていい方向に行くとは私はとても思えません。

 街角で行われている献血は無償ですが、献血に対して報酬を支払うと、かえって献血量は減り血液の質も落ちるというデータがあります。これも同じことですね。見返りで人を動かす時代はとうに終焉していて、これからは「意味」を求めて人は動きます。その人の心の底から湧き出るモチベーションで自ら動く、組織をそんな集団にしたいと思う今日この頃です。

 

大阪支店長 吉村 徳男