「会社の財産って何ですか?」と社長に聞くと、たいてい「わが社は人がすべてだよ!」という返答があります。「人は城、人は石垣…」と詠んだのは、かの武田信玄公ですが、私も本当にそう思います。AIが台頭してきた時代だからこそ、人間にしかなし得ないことも同時にいろいろと出てきて、人間のすばらしさを再確認させられています。

 さて、人が大事ということは分かりますが「ではその財産のために会社は何をしていますか?」と聞くと、「・・・」まず返答はありません。せいぜい「年に数回、社外研修を受講させている」程度でしょうか。人が最も大切だとわかっていながら、そのための施策は皆無、というのが大半の中小企業の実情ではないでしょうか。

 
 人には「教育」が必要です。それは誰もが理解していますが、その手段がわからない、というか思考停止に陥っているパターンが多く見受けられます。そのため、教育を定義づけるところから始めなければいけません。いったい教育とは何なのか・・・

 様々な意見や表現はあるでしょうが、私は「教育=考え方・行動を正すこと」だと定義しています。社外研修を受講させる、あるいは子供に塾に行かせる・習い事をさせるというのは知識等の習得であって、狭義でいう教育とはちょっとニュアンスが違いますね。賢くはなるかもしれませんが、知識を得るという目的からすると本を読んでいるのとそう変わらないかと思います(知識の習得自体を否定しているわけではありません)。

 そういう意味で、本来の教育は継続性が必須で、ある期間に何か特別なことをすることでは決してありません。教育研修を1日数時間受講したとして、その時はその気になるのですが、鋼鉄の意思の持ち主でもなければ、まあ2~3日もすれば従来の姿に戻っています。むしろ後には「やった感」しか残らず、弊害にすらなるでしょうね。

 その都度、いい選択をさせ、いい方向へ導く。これは本当に労力がかかります。ですから本来は、子の教育においては親(学校)、社員の教育にあっては会社しかなし得ないものでしょう。儲かりませんし熱量が必要なので、まあ外部に委ねるのは難しい。そこを理解し自ら労力をかけている親(学校)・会社でこそ、やはり人が育っている、そう思います。

 やっぱり、会社は人が全てです。この最も必要な財産のために、まだまだ労力が足りないなと汗顔の至りです。本来の教育を実践する制度をいま構築中ですが、顧問先にもこの教育(人事)制度を広めていかねば!と妙な使命感がでてきた今日この頃です。

 

大阪支店長 𠮷村 徳男