組織の危機は色々な場面で訪れます。そしてその多くは突然やって来たように見えて、実はその原因となる要素が少しずつ組織を蝕み、水面下で徐々に進行しているものです。

 徳川家康が言ったとされる言葉をひとつ紹介します。

 ――いさめてくれる部下は、一番槍をする勇士より値打ちがある。

 つまり、先陣に立って合戦の口火を切る勇ましい兵士よりも、自分の誤った考えや行動を改めるように忠告してくれる部下の方に価値があるということです。自分の地位が上がっていけばそれだけ自分に注意してくれる人も少なくなっていくものですが、たったひとつの判断の誤りが死を意味する戦国の世の中、そうした場面で自分に忠告してくれる部下の大切さを知っていたのでしょう。

 戦国時代ならぬ現代においては、経営トップの小さな判断ミスが重なることで、組織を徐々に崩壊に近づいていくことになります。

 このコラムを読んで頂いている経営者の皆さん、皆さんの周りには「いさめてくれる部下」はいらっしゃいますか?経営者である自分に対して、耳の痛いことをきちんと言ってくれる人たちはまだあなたの側にいらっしゃいますか?

 最後にもうひとつ、徳川家康の言葉をもうひとつだけ引用しておきます。

 ――およそ人の上に立って下のいさめを聞かざる者の、国を失い、家を破らざるは、古今とも、これなし。

 

兵庫支店長 増尾 倫能