TVでバラエティ番組を見ていると、芸能界での生き残りをかけてお笑い芸人が体を張っている姿がよく目につきますね。あるいは社長さんと仕事の話をしていると、いかに会社を存続させていくかという話に必ずなります。それぞれの世界でいかに生き延びるかということは、生きとし生けるもの全てに共通する命題です。これらの生存戦略は地球上のいたるところで散見され、経営をする上で非常に参考になります。
もともと生物は、生をつなぐために2つの道を歩みます。自ら動いて獲物をとる戦略を選択したのが動物、動かない戦略を選択したのが植物です。動物の方は分かりやすくて、様々な特技を進化の過程で身につけていくのですが、本当に興味深いのはむしろ植物の方です。なんせ動かない定住戦略を選んだので、普通に考えれば動物に捕食されて終わり、いやその前に動物のように食料を探しに行くことすらできずに餓死、が妥当なところでしょうか。
しかし、植物たちは生き延びます。動かない戦略をとった彼らは、地面・空気・太陽光から生きるために必要なもの全てを引き出さなければならず、結果的に無から有を生む光合成という最強の特技を身につけます。また、動物に部分的に捕食されても死なないように、身体のどの部分を失っても再生できるしくみを手に入れました。
極めつけは、繁栄戦略です。フルーツを考えると分かりやすいのですが、時期になると果実は派手な色や香りを出してあえて動物に捕食させ、種を自分のテリトリー外に飛ばして繁栄を図る方法を生みだします。種が未熟なうちは、決して果実を色づかせず香らせず、それどころか毒素を出して動物に捕食させないようにします。動物も長い戦いの中でそれは認知しているので、食べ頃になるまでは決して手を付けません。
結果、植物は地球上生命体のおよそ96%を占め、実は地球上の支配者です。我々人類が絶滅しても植物にはほとんど支障はありませんが、植物が絶滅すれば我々人類はまず生存不可能です。そういう意味で、植物の生存戦略は今のところ大成功だと言えるでしょう。
こういった生存戦略を見ていると、「共存」というキーワードがいかに重要かということを思い知らされます。植物たちは、決して動物たちを排除しようとせず、すべての生物と共存することで生をつないできました。争いの尽きない我々人類のあるべき姿を、先導して示してくれている気さえしてきます。我が家の庭で初めて2度咲きした金木犀(キンモクセイ)の香りを楽しみながら、そんなことを考える今日この頃です。
大阪支店長 吉村 徳男