娘が中学受験に挑むという事もあって、洗面所やトイレ、寝室等に漢字・慣用句や四字熟語を家じゅうに貼っていたのですが、その中で私が目に留めたものがありました。 それが「不言実行」です。今日は「不言実行」について改めて考えてみました。
「不言実行」の四字熟語の意味としては、理屈を言わずにやるべき事柄を黙って実行すること、とされています。 この「不言実行」についてさらに調べると『論語』の中で「子貢問君子、子曰、先行。其言而後從之。」(意訳:子貢が君子のことをおたずねした。孔子は述べた。まずその言おうとすることを実行してから、あとでものを言うことだ。)という記述があることがわかりました。
自らのやるべきことを見極めたら、黙々と行動に移す、
【ストイックにトレーニングを行い、結果を出すアスリート】
このようなタイプの方が「不言実行」タイプの方なのだろうと思われます。強い信念をもって人知れずそういった努力を重ね、成果を残せる方、思ったように成果が残せなくてもその積み重ねた努力により人間的に成長される方もいます。その「実行」をしてきた過程は本当に素晴らしいことと思います。
ただ一方で、「不言」であるがために、時に周囲に誤解を与えてしまうケースもあるように思います。実行したことが良い結果として現れなければ評価されにくく、また何を考えているかわからない為誤解を与え孤立してしまうこともあるからです。
また、「不言実行」により自らを律するだけでなく、他者にも「言わなくてもやるべきだ」という気持ちがあるならば、それはちょっと危険信号かもしれません。なぜなら、それは一方的な価値観を相手にも無意識に強要することでもあり、ハラスメントにつながる可能性があるからです。
ちなみに私は、組織のリーダーの立場であれば「不言実行」よりは「有言実行」であるほうが良いと思います。 「不言実行」は尊重できる考え方、行動様式と思いますが、組織の企業理念や経営理念を実現する為には少なくとも組織のリーダーであれば具体的にどう行動していくのか、ちょっとしつこい位「有言」することで「実行」が促進されるからです。そこには「言わなくてもやるべき」という価値観が入る余地はないのではないでしょうか。
一方で組織のメンバーにおいては少し様子が違うかもしれません。
「不言実行」か「有言実行」か、でいうと、バブル崩壊後に日本に浸透してきた成果主義により組織はメンバーの「有言実行」を求めるようになりました。メンバーの評価をするにあたり、それぞれの目標をどれだけ実行できたのかを評価の指標としたのです。 成果を上げ評価された人がいる中で、「不実行」となる事を恐れて「有言」しない、またはできる範囲での「有言」しかしない等の憂慮すべき問題も発生しました。
大切なのは「有言」することに囚われるのではなく、メンバー自身が何をやるべき事かをとらえ、その「実行」に向けて心を奮い立たせていく事ではないでしょうか。そしてそこには「不言実行」も「有言実行」も大きな違いが無いように思います。
なるべく大きな目標を立てる勇気を促し、結果だけでなくそれを「実行」していく過程を適正に評価する、そのためには益々メンバーとのコミュニケーションって大切だなと思うのです。
神戸支店長 春原 真起子