皆さんは次のようなことを考えたりしたことはありませんか?

 

 ・「親は単身赴任中です」と聞くと、母親ではなく父親を思い浮かべる
 ・血液型を聞いて、相手の性格を想像することがある
 ・「体育会クラブ出身だから、根性はあるだろう」と思いこみ採用する

 

 あくまでも一例ではありますが、こういったことを日常や職場の中で自然と考えてしまうことがあるかと思います。

 

 これをアンコンシャス・バイアスといいます。日本語で置き換えると、「無意識の偏見・思い込み」を意味する言葉です。

 

 私はこの言葉をアンガーマネジメントの学習ではじめて目にしました。当初は何となく「自分にも当てはまることがあるな」といった程度で考えていましたが、この言葉を調べるにつれて、その持つ意味の重要さを知ることになります。

 

 アンコンシャス・バイアスを持つこと自体は問題ではなく、大量の情報を素早く処理する「速い思考・直感的思考」に不可欠なものであり、それがうまく機能すれば、脳は少ないエネルギー消費で情報処理しやすくなるとされています。

 

 ただ、自分のアンコンシャス・バイアスに気づかずにいると、そこから生まれた言動が知らず知らずのうちに相手を傷つけたり、自分自身の可能性を狭めることになるなど、様々な影響を与えることになるため注意が必要です。はじめに挙げた事例をイメージするとわかりやすいかもしれません。

 

 それではどうすればアンコンシャス・バイアスを解消させることができるのかということになりますが、大きく2つの対処法があるとされています。

 

 ひとつめは、「決めつけない・押し付けない」ということです。特に業務指導時において「普通は~だ」とか、「~することは常識ですよね」といった言動を発している場面に遭遇します。実際、振り返ってみると、私自身もそのような言動で接していたことがありました。何か定められたルールが存在するならともかく、そうではない場合には自分の決めつけ・押し付けになっているかもしれません。頭ごなしに決めつけず、相手を尊重する心の姿勢をもちたいところです。

 

 もうひとつは、「自己認知」です。アンコンシャス・バイアスの正体は「自己防衛心」だと言われています。脳が無意識のうちに自分にとって都合の良い解釈をしてしまうことで起きています。確かにそこまで深く考えなくてもフワッと思い浮かびますよね。これは自然なものであり、自分では完全になくすことはできません。そうなれば、どうすべきかということになりますが、それが自己認知であり、自分のアンコンシャス・バイアスを洗い出すというものです。おそらく自分の「クセ」が見つかるはずです。

 

 経営理念という目的に対してベクトルを合わせていく上で、人と人との関わり方はますます重要なものになっていきます。アンコンシャス・バイアスの問題、特にマイナス面については、個人間だけでなく、組織全体にも影響を与えていくものです。働き方や仕事観が多様化する中で、今後、組織の多様化についても避けて通ることはできませんので、まずは自分のちょっとしたモノの見方が周りに悪影響を及ぼすことがあるという意識をもつところから始めていきたいと思います。

 

大阪支店長 東 武志