オフィスでゴミを目にした時、あなたはどう反応しますか?

 

 オフィス空間を「自分のもの」として扱うか「他人のもの」として扱うかは、その人の組織へのコミットメントの度合いを反映していると言われています。自分の空間とみなす人は、オフィスを清潔に保つことに価値を見出し、これは自分の部屋を掃除するのと同じ原理に基づきます。一方で、オフィスを「他人のもの」とみなす人は、清潔さを維持する価値を認識しにくい傾向があります。

 

 組織へのコミットメントが高い職場では、従業員は互いに協力し、お互いの成功を支え合う傾向があります。このような環境は創造性と生産性を促進し、結果として企業の成長と競争力を向上させます。対照的に、コミットメントが低い職場では、従業員は組織や同僚に対してあまり関心を示さず、主に個人の利益を追求する傾向が見られます。これは職場の団結力の欠如や相互支援の不足を招き、全体としての職場の雰囲気が悪化します。特に、組織コミットメントが低いリーダーがいる場合、その影響は組織全体のパフォーマンスと業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

「割れ窓理論」をご存知でしょうか。これはアメリカの犯罪学者、ジョージ・ケリング氏が提唱した理論で、1枚の割られた窓ガラスをそのままにしていると、さらに割られる窓ガラスが増え、いずれ街全体が荒廃してしまうというものです。つまり、小さな問題を放置することで全体の環境が徐々に悪化するという概念です。オフィスの清潔さは、従業員が組織に対してどれだけ帰属意識を持っているかを示すバロメーターとなり得ます。したがって、オフィスの清潔さを維持することは、組織の健全性と成長能力を維持するための重要な要素と言えます。

 

 オフィスでゴミが落ちている問題に対する直接的な解決策は、ゴミを見つけたら誰でも拾うというルールを設けることです。しかし、このアプローチは実行すると拾う人と拾わない人の間で不満が生じる可能性があります。より効果的な方法は、ゴミ拾いを日替わりや週替わりで担当する係を設けることです。これにより、担当者は清掃を自分の役割として受け入れるため、より合理的に問題に対処できます。

 

 しかしながら、これらのアプローチが本当に最適な解決策かどうかは再考の余地があります。職場は学校とは異なり、一定のルールを設けることが必ずしも解決策ではない場合もあります。重要なのは、組織コミットメントを高めることですが、これは単に帰属意識や忠誠心を強制することではなく、「みんなのもの」という視点を育てることです。自分のものであり、他人のものでもあるこの空間に対して、多くの気づきとそれに伴う行動が自然に生まれる文化を築くことが重要です。

 

 些細なことかもしれませんが、このような考え方が根付いている組織はとても魅力的です。みんなで使っている空間だからこそ、みんなのために清潔にする。これは、単なるゴミ拾いの話にとどまらず、組織全体の姿勢や文化に通じる大切な考え方で、人と組織の成長に不可欠な要素となり得るものだと思います。

 

福岡支店長 城戸 康行