イノベーションと聞いて、何が思い浮かぶでしょうか。iPodやiPhoneを世に送り出したスティーブ・ジョブズでしょうか。あるいは天下布武を推し進めた織田信長なんて声もあるかもしれません。イノベーションが必要だ!なんてよく言われますが、誰もがスティーブ・ジョブズになれるわけもなく…そもそも、イノベーションとは何なのでしょうか。

 

 人によって意味や定義が微妙に違っていそうですが、私はイノベーションを「新たな考え方やとらえ方で、新たな価値を生み出すこと」と捉えています。社会に圧倒的に支持される製品とか、社会を劇的に変えるサービスとか、そんな大それたものではなく、誰しもがもつ「身近にある可能性」ではないかと。

 

 そしてそれは製品や技術に限らず、仕組みやサービス、販売や組織と、あらゆる場面で発生しうるものだと思っています。

 

 例えば、どこにでもある冷蔵庫。言うまでもなく食品を低温に保存しておくためのもので、ほぼ世界中で需要があるでしょう。冷蔵庫を販売することはイノベーションでもなんでもありませんが、冷蔵庫を食品の凍結防止用としてエスキモーに販売できればどうでしょうか。冷やすためでなく冷えすぎないためという、従来と全く違う効用での販売。これは新たな価値を生みだしており、販売のイノベーションと言えるでしょう。

 

 また別の例で、瓶ビールを1ケース注文された時。スピード感をもって即時に配達したとてそれは単なる「いいサービス」ですが、1ケースのうち数本をキンキンに冷えたビールに取り換えて、配達と同時にすぐビールを楽しめる状況を創り出せば…これも新たな価値で、配達のイノベーションとでも言えますかね。

 

 いずれも、製品としては同じものです。それでも、考え方やとらえ方によって新しい価値を生み出しており、イノベーション以外の何物でもありません。

 

 スティーブ・ジョブズのような特別な才能がなくても、あるいは特別な環境がなくても、誰でもイノベーションは起こせるものだと確信しています。むしろ、イノベーションの種はありふれた日常生活の中に無数に存在しているものだと思います。それは、(広い意味での)顧客に真摯に向き合うことでのみ、成しうるものだろうと。当たり前の積み重ねの上に小さなイノベーションが広がっている、そんな感覚に襲われる今日この頃です。

 

大阪支店長 𠮷村 徳男