いま社会には理系が不足している-こんな話を聞いたことはありませんか。理系の就職有利説もその一つでしょうが、IT業界の人材不足等が叫ばれて久しいので、ざっくりと理系全体が社会に不足している印象を受けるのかもしれませんね。

 

 しかし…あれ、おかしいな。理系も不足しているのでしょうが、私の個人的な感覚でいえば文系の方が圧倒的に不足しているような。。便利な機器やシステムが登場しても、「それを何のためにどう活かすのか」という役割=文系が圧倒的に足りない…特に日本においては、未だにFAXが活躍している役所等、技術を活かす思考が本当に弱いです。

 

 もちろん文系・理系に優劣などありませんが、求められる場面というか、思考的に必要な順序は確実にありますね。特にビジネスパーソンにとっては。

 

 社会人になって、まず求められるのは理系的思考です。論理的にスケジュールを立て、効率的に業務を処理する。とにかく仕事を1つでも多く、早く身につけることが新人には求められます。仕事に再現性があるので、仕組みや法則の習得が成長に直結しますね。

 

 しかし年数を重ねると、次は文系的思考が必要になります。なぜこの仕事が必要なのか、どんな意味があるのか。仕事の再現性は減少していき、常に正解を探り、創ることが求められます。数値化しにくく分かりにくいのですが、思考力を磨くことが最優先です。

 

 この順序にそぐわない仕事はうまくいきません。まだ視野の狭い新人が、書類一枚作成するのに「これにはなんの意味があるのか?」なんて考えだすと…仕事が止まります。逆に、管理職が仕事の意味を考えずにひたすら効率化に走ると…方向性を誤り、悲惨な結果になるでしょう。

 

 先述の「理系の就職有利説」は、知識的にも思考的にもやはり「すぐに役立つ」ことがそう認識させるのでしょう。統計的に文・理の就職率に差はありません。文系は役に立たないのではなく、その本領が求められる時期が遅めなだけであって、長期的なキャリアプランを考えれば、哲学や歴史といった文系的思考はむしろ必須の要素でしょうね。

 

 そして、双方の要素が求められるのが経営。今日のように複雑で不安定な世界においては、文・理どちらもハイレベルで同居させて発揮することが求められます。言いかえれば、アート×サイエンス、熱いロマン×冷静なソロバン、これらのバランスをうまくコントロールできれば自ずと事業は発展します。文系的思考に傾きがちな私は、理系的思考を誰かに補ってもらわなくては…そう思う今日この頃です。

 

 大阪支店長 𠮷村 徳男