私は高校・大学時代にテニス部に所属、姉夫婦は一家揃ってテニスプレイヤーということもあって、日頃から何かとテニスには関心を持っているのですが、これまでテニスに関心がそこまで高くなかったという人にとっても今年の全仏オープンでの「加藤未唯」選手に関するニュースを見かけたという人は少なく無かったのではないだろうかと思います。

 

 今大会で加藤未唯選手とドイツのプッツ選手のペアが混合ダブルスで優勝しました。決勝ではフルセットまで縺れ込み、ミスが許されない高い緊張感が張り詰めた中で見事に勝利を収めるなど、本当に素晴らしい試合でした。

 

 ただ、加藤未唯選手が優勝した事以上に注目される事となりました。混合ダブルスの日程の前に行われていた女子ダブルス3回戦で、加藤未唯選手がボールガールに返球しようとして打ったボールがダイレクトにボールガールに当たった、ボールが当たったボールガールは号泣してしまった、審判が下した「警告」の判定に相手ペア選手が抗議した後「失格」という判定に変わった、という事態が発生しました。

 

 ここでは、返球したボールの意図性や、ボールガールが号泣した理由、相手ペア選手のスポーツマンシップの真偽、審判の判定が変化した事を議論するつもりはありません。私はこれらの事がこれだけ大きな話題になったというのは、起きた出来事に対して適用されるルールと、そのルールに対する人々の価値観がそれぞれ異なったためではないかと感じました。

 

 組織においても就業規則というルールがあり、その組織に属している社員は適用されています。 就業規則に曖昧なルールがあれば、そのルールを運用するときに人それぞれにとって「都合よく」または「不都合に」運用してしまう可能性があります。そういった曖昧さはできるだけ無い方が当然良いのですが、曖昧さをなくすために事細かく書き過ぎると、結局何が言いたいことなのかわかりにくい文章になってしまいます。

 

 書かれている文字面ですべてを伝える、ということには限界があります。私は、大切なのは文字で示すだけにとどまらず、「組織の風土づくり」が大切と考えています。

 

 組織の風土づくりを考える際は、ハード面とソフト面が在ります。ハード面には就業規則の他、企業理念やクレド、人事評価制度等があります。ハード=明文化された目に見えるものと言えるでしょう。一方、ソフト面には社内のコミュニケーションや人間関係、心理的安全性や組織へのエンゲージメントがあります。 目には見えないけれども、社員の行動様式を決定する慣習・雰囲気とも言い換えることができるでしょう。

 

 ハード面は充実しているがソフト面が不足していると組織運営でも様々な歪が生じることがあります。例えば、業務引継ぎを考慮せず有休消化をして退職してしまうのが慣例化してしまっている等です。 確かに規則やルール上は問題がない行動かもしれませんが、業務引継ぎの重要性を組織内の価値観として共有化されていない可能性が高いです。

 

 組織内のコミュニケーションは十分に取れていますか?
 ミスがあった時、相談等、上司と部下は話しやすい人間関係ができていますか?
 社員の皆さんは自社で働くことを喜びに感じていますか?

 

 ソフト面については、特に経営者・管理者層がどう言動しているかが影響します。 行動で示すだけでなく、部下やメンバーにしっかり伝え、しっかり聞くことというのが大切だなと思うのです。

 

 今回の騒動についても、審判および大会運営側が関係者に対してしっかり伝え、しっかり聞くということができればここまで大きな話題にもならなかったのではないでしょうか。

 

神戸支店長 春原 真起子