アサーションとはお互いの価値観を尊重しながら相手と対等な立場に立って自己主張をするためのコミュニケーションスキルで、職場内でのコミュニケーション不全の解消法として現在注目されている考え方です。

 

 人は普段話している言語のほか、話す・聴くときの視線、姿勢、声色、スピード等の非言語と合わせてコミュニケーションをとっています。ですが、人と話をしていて上手く相手に思いが伝わらないな、どう言えば相手に響くだろうか?と思いを抱いた事はないでしょうか。また、同じことを伝えているのに、Aさんには正確に伝わるのに、Bさんには正確に伝わらないという事はありませんか。

 

 以前、準拠枠についてこちらのコラムでお話したことがありますが、実は発する言葉にも人それぞれに違う意味合いを持つ場合があります。

 

 例えば、「難しい」という言葉。

 

 自分の能力的にできない、できそうにない
 時間的に余裕がない、忙しい
 それをやりたくない(他のことをやりたい)
 等など

 

 それを発した人がどういう気持ちから「難しい」と言っているのかがちがいます。
 また、すぐに「難しい」と発する人もいれば、相当に耐えがたい状況になって初めて「難しい」と発する人もいます。

 

 話の相手も同じように普段どんなときに「難しい」と言うのかによって、コミュニケーションの正確性に大きく影響があることがわかると思います。

 

 「難しい」と言う気持ちや状況が似たような場合の時、つまり価値観が近い相手だと、その言葉が正確に伝わる可能性が高まります。逆にそうでない場合、価値観の違いが大きいと正確に伝わらない可能性が出てきます。

 

 アサーションでは、そういった言葉の意味合いの違いがあることを意識しながら正確に自分の考えを相手の価値観に配慮しながら伝える努力を必要とし、また相手にそれが伝わっているか確認しながらコミュニケーションすることが大切とされています。このアサーションを実践する為に一番重要と私が感じているのは素直さなのかなと思っています。

 

 素直さとは、まっすぐに受容することができ、柔軟性があり、謙虚に話が聞ける姿勢であることをいいます。

 

 この素直さが足りない場合、どうなるのか。

 

 自分に対して素直さが足りない場合、相手に遠慮して自分の考えを正しく伝えない事があるでしょう。場合によってはストレスや不満を抱えてしまう可能性があります。それらを表現することなくため込んでしまうと精神的な疾患に繋がったり、突然キレて会社を辞めてしまうという恐れもあります。

 

 相手に対して素直さが足りない場合、自分の考えが絶対的となり、相手にも無意識に同じものを求めてしまいます。 相手が同じではない場合は同じでない事を理由に相手に対して攻撃的になりがちになるでしょう。職位の上下関係があればパワーハラスメントに発展する恐れもあります。

 

 まずは、自分の感情に素直になる事。自分が伝えようとする言葉の裏側にどんな感情があるのかを自分自身がまず受け止める。相手に伝える時には相手の価値観や感情を素直に受容しながら相手への伝え方を工夫する。合意が必要な場面であれば、合意できるところがどこなのか相手の言葉を謙虚に受け止めながら確認し歩み寄る。

 

 同僚や上司、顧客との円滑なコミュニケーションをする上で有効なこのスキルですが、特に部下を持つ上司の方には身に着けていただきたいと感じています。

 

神戸支店長 春原 真起子