10月26日、グランドプリンスホテル新高輪で「2023年プロ野球ドラフト会議」が開催され、多数の有望な選手たちがプロへの第一歩を踏み出しました。その一方で、ドラフトの有力候補とされながら指名を逃した選手も多く存在し、プロへの道がいかに厳しいものであるかを再認識させられた瞬間でもありました。

 

 プロ野球のドラフト制度と、多くの企業が行っている従業員の採用・育成の取り組み。私はこの両者には非常に多くの共通点があると思っています。それは実質的には「人材の選抜」と「育成」の連続したプロセスだということです。

 

 野球のドラフトでは、各チームが自らの戦略や短期・長期のビジョンに基づいて未来のエースや中心選手となるであろう新人選手を選択します。しかし、選ばれたからといってその選手が即戦力として活躍するわけではありません。ドラフト後の選手の成長、その後の育成が非常に重要となるのです。

 

 企業の場合も、新卒採用や中途採用を行い自社に合う人材を選抜します。しかし、入社したからといってその従業員が即戦力として活躍するとは限りません。ここでも採用後の研修や育成が重要となるのです。

 

 野球の世界では、新人選手には一定期間、二軍での経験が求められることが多く、二軍での経験を通じて技術や精神面での成熟を促し、一軍での戦力としての準備を整えます。企業においても、新人には入社後の研修やOJTなどの形で実務における基本的なスキルや知識を身につける期間が設けられます。

 

 このような育成の過程で、選手や従業員の中には期待した成果を出せずに退団や退職を選ぶ者も少なくありません。しかし、それはその組織や環境が合わなかった、または適切な指導やサポートがなされなかったことが原因であることも多いのです。

 

 そのため、組織や企業としては人材の選抜だけでなく、適切な育成の体制や環境を整えることが求められます。それは、選手や従業員一人ひとりの持つ可能性を最大限に引き出すための取り組みであり、組織全体の競争力を高めるための投資でもあるのです。

 

 適切な選抜と継続的な育成の取り組みが組織の成功に繋がる鍵となるわけですが、労働力人口の減少に伴う採用難が今後も続くことを考えると、より「育成」に重きを置いた企業戦略が求められる時代と言えるでしょう。

 

福岡支店長 城戸 康行