「タイパ」という言葉をご存知でしょうか。一昔前までなら「コスパ」いわゆるコストパフォーマンスを意味する言葉が費用対効果を表現する際に広く使われていましたが、近年の若者は「タイムパフォーマンス(タイパ)」を求める傾向にあると言われています。

 

 「映画を早送りで見る人たち」という書籍も出版されたように、映画や動画などを早送りで見るのが若者の間では常識で、視聴画面には必ず10秒スキップや倍速視聴機能などがあり、コンテンツを選ぶ際にこういった機能も一つの基準になっているそうです。

 

 動画サービスの普及によって供給量が多く、膨大な量の作品をチェックする時間に追われることになったという理由もありますが、倍速視聴が常識となった一番の理由は「タイパ」を求める若者の心理にあると言われています。

 

 当然これにはSNSの普及は切っても切り離せないのですが、今の若者は「いいね」やリツイートの機能を使いコミュニティのなかで交流し共感するので、自分が息をしやすくするため(または追いついている自分に安心するため)に倍速で視聴します。そして、1秒でも時間を無駄にできないので評価が高い確実性のあるものを選びます。これは若者が現代社会を生き抜いていくための生存戦略といえます。

 

 このような心理は当然仕事観にも影響してきます。思い描くキャリアを実現できる企業であるかを重視し、企業選びを失敗して時間を無駄にしたくないと考える傾向が強く、日常の業務においても短時間で最大限の成果を求めるので生産性の悪い職場を嫌います。また、タイパがよければワークライフバランスも向上するはずだと考えています。

 

 こういった若者の仕事感を知ると、海外の新社会人が「9時から17時まで働くなんて頭がおかしくなりそう」とSNSに投稿した動画が日本でも注目されることも理解できるのではないでしょうか。当然この投稿に対し、批判的な意見もありましたが共感する人も多くいました。こうした価値観を頭から否定するのではなく、こういった価値観が形成される背景や、こういった価値観を持っているんだということをまずは理解していかなければと思う今日この頃です。

 

東京支店長 白倉 玄