近年は職場でのダイバーシティが進み、個々の事情やライフイベントに対応できる働き方への施策が国としても企業の取り組みとしても徐々に整備されてきています。育児や介護、障害や心身の疾病を抱えた人が休みを取得できたり、フレックスタイム制やテレワークといった柔軟な働き方もずいぶん浸透してきています。このように、様々な制約の中でも安心して働き続けられる職場環境の整備は今後もますます必要になってくることでしょう。

 

 一方で、こういった個々の事情に対応できる職場をマネジメントする管理職にとっては数年前に比べ難易度が格段に上がっており、休職や退職でたとえ一人の減員であっても頭を悩ませている管理職の方も多いのではないでしょうか。いくら法令遵守やダイバーシティといっても、減員状態を言い訳にはできず業績目標の達成を求められます。部下のことを考えると減員となった分の業務を無理矢理押し付けることもできず、管理職でありながらプレイヤーとしての役割をこなさなければならないということが実際多くの現場で起こっていることでしょう。

 

 こういった状況を乗り越える際、ある特定の人が無理をすることや、従業員の良心に訴え「こういう時こそ助け合っていこう!」というのはもはや通用しないように思えます。なぜなら、残された職員たちにも大小さまざまな事情があるからです。先述したように、育児や介護でそもそも忙しかったり、障害や疾病を抱えている人も無理な勤務はできません。当然、部下の健康への配慮やリスキリングの時間の確保なども考えなければなりません。

 

 こうした問題への解決策として、管理職業務を二人一組でシェアする体制を整備したり、休職や退職があった際のフォロー業務を従業員の職務内容にはじめから明確に定めておくといった取り組みが考えられます。減員した分の業務を割り振る際に管理職が一番悩ましいのが、業務を割り振られた従業員からの不満の声だと思います。ですので、良心に頼るのではなく、職場環境の変化に応じて業務分担の仕組みや職務内容も変化が必要であるということです。

 

 先日の大雪の影響で、お子さんが通う幼稚園で急遽お迎えに行かなければならないということで職員が早退する場面がありました。たった1時間の早退だったのですが、その職員がとても申し訳なさそうな表情をしており、そんな表情をさせてしまっていることに自分の非力さを感じた出来事でした。あの時の表情を忘れず、よりよい組織を築き上げていこうと思う今日この頃です。

 

東京支店長 白倉 玄