他人の足をひっぱる人たち

支店長コラム

 「同じ年齢の人間は同じ待遇であるべき」という感覚。日本において、そういった感覚は一般に共有されています。例えば学校において、飛び級は原則的にありません。また、能力別のクラス編成をしようものなら、「レベルの低いクラスに入れられる子がかわいそう」という声が上がります。
 
 こういった「みんな一緒」という意識はどこから来るのか。心理学的な観点から言うと「母性原理」が強く作用していると言われています。母性原理とは、温かく包み込む機能のこと。つまり出来の悪い子や弱い子も含めてみんな区別なく平等に扱おうとするのです。
 
 善と悪、上と下を分類して扱う「父性原理」が強い欧米諸国に比べて、日本社会ではまだまだこの「母性原理」が強く機能しています。そこでは、「みんな一緒」という平等意識が強く、能力差を認めようとしないため、できる人物や成果を出している人物がいるとそれを妬み、引きずりおろそうとする心理が働きやすいのです。出る杭は打たれる、ということですね。
 
 さて、他人の足をひっぱる人というのは、なにも出世競争をしている同期入社の同僚だけではありません。部下や上司でさえも、能力の高いあなたの足をひっぱろうとするのです。
 
 もちろん人の足をひっぱる上司がいること自体、その組織にとって、場合によっては致命的(ただその他の従業員の頑張りによって会社が持っているだけ)になります。
しかしながらその上司(時として経営者)に対して、どうすれば良いか部下目線で考えてみたいと思います。
 
 会議で決定した事項を粛々と進めていただけにも関わらず、「彼は相談もなく勝手にことを進めるから困る」と言われているのを知って愕然としたという人もいます。
 
 一方で、上司の忙しさを配慮せずにこまめに報告や相談にいく部下は迷惑がられるどころか、むしろ可愛がられていたりもします。どうしてでしょうか。
 
 みなさんもそうかもしれませんが、世間の上司たちは、たいてい「部下から信頼されているか」が非常に気になっています。頼りない上司と思われていたらどうしよう、能力の無い上司だと思われていたらどうしよう、と不安を抱えているものなのです。
 
 部下から何かにつけて相談されたり、こまめに報告を受けたりすると「自分は信頼されているのだ」と自尊心が満たされ、自らの存在価値を実感することができます。
 
 つまりホウレンソウは、報告や相談がないと仕事を進める上で困るというような実務的な意味だけでなく、実は上司の心へのケアといった心理的な意味も持つということですね。
 
 誰しも、自分の足を引っ張られたくありません。
 
 それがまだ「個人的に」足を引っ張られるという範囲であれば影響は限定的ともいえますが、会社発展の為に必要な動きに対して、他ならぬ経営者やその他の上司たちから足を引っ張られるとなれば、大問題です。
日頃からのホウレンソウを通じて彼/彼女の心のケアに励むことも、(残念ながら)日本社会では必要なスキルのうちのひとつなのかもしれません。

 

兵庫支店長 増尾 倫能