共有できないはずの感覚

支店長コラム

 人間同士の信頼関係をつくる上でもっとも大事な感覚は何か。
 
 このことについて、霊長類研究の第一人者である山極寿一氏が非常に興味深いお話をされていましたので紹介したいと思います。
 
 インターネットが普及し、人と人の繋がりが非常に容易になった現代において、各種SNS等のサービスを通じて私たちの脳は「繋がった」と錯覚するけれど、実際には信頼関係は担保できていないというのです。
 
 どういうことでしょうか。もう少し掘り下げてみましょう。
 
 動物には五感があります。その五感のうち、「触覚」「嗅覚」「味覚」の3つと、「視覚」「聴覚」の2つの間には決定的な違いがあるそうです。
 
 共有可能か否か。
 
 「見る」と「聞く」は共有できる感覚ですが、匂いや味は言葉で表現するのが難しいし、触覚に至っては触っている人は同時に対象物から触れられてもいるわけだから、その感覚は隣の人とはお互いに簡単には共有できないと山極氏は言います。
そして、その「共有できないはずの感覚」が、信頼関係を作る上で最も大事なものだというのです。
 
 本来共有できないはずの「触覚」を一緒に経験する、例えば母子やカップルは肌の触れ合いを長くすればするほど信頼が高まりますし、一緒に食事をすることで「味覚」を共有している人たちを見た私達は「あの人たちは親しい間柄だ」と判断します(同じ物を見ることで「視覚」を共有している人達を見ても、誰もそんな風に判断しませんよね)。
 
 私たち人間の脳の奥深くには、そのような働きが刻み込まれているのだというのはなかなか面白い説に思えます。
 
 確かに学生時代の部活動の合宿で一緒に食事をして、一緒にお風呂に入り身体感覚を共有することでチームワークが非常に高まった経験は私だけでなく皆さんにもおありかもしれません。
なるほど、「触覚」「嗅覚」「味覚」といった感覚を共有したからこそ、ということなのでしょうか。
 
 とにかく人間関係が希薄になり、誰とでもインスタントに繋がり得る現代。
組織の中の人間関係も同じこと。目標の共有やプロジェクトの進捗管理を社内ネットワークシステムに任せ、連絡はメールやグループウェアに集約という会社も多いでしょう。
 
 チームワークの基盤には、脳ではなく身体的にひとつになっている感覚が不可欠だという山極氏の考え方をヒントに、自分たちのチームワークを更に高めていくにはどのようにしたら良いのか、一度じっくりと考えてみたいと思います。
 

 

兵庫支店長 増尾 倫能