アメリカの大統領選挙、見ごたえがありましたね。単なる一国のリーダー選出にとどまらず、世界の行く末を大きく左右する、まさに人類の一大イベントとも言えるでしょう。思いのほか接戦で、候補者を通して有権者の迷いや価値観の多様化のようなものがありありと見えました。民主主義とは何か、国の在り方とは、幸せとは…一つの価値観に縛られない、まさに今般の複雑な社会の在りようが問われた選挙戦だったと思います。

 これだけ社会が高度化・複雑化してくると、一面的なものの見方は全く通用しなくなっていますね。絶対的な解なんて存在せず、強いて言えば利害関係者の最大公約数を探すことが正解に近いと言えるのでしょうが…とにかく色んな角度から物事を見てアプローチすることが必要です。そのために、俯瞰(ふかん)することが求められます。

 俯瞰することの大切さは、皆さんご存じの「群盲象をなでる」寓話が分かりやすいですね。象の足を触った人は「象とは柱のようだ」と言いますが、他の人は尾を触り「ムチのように細い」と言い、また別の人は鼻を触り「伸縮自在のものだ」と言い、あるいは牙を触り「硬くてとがってる」と言い…

 皆それぞれ言っていることは正しいのですが、それらは各パーツを正確に言い表しているだけであって、象そのものを正確に言い表せているわけではありません。逆に言えば、それらを全て備えているのが象。一面的な視野で、「象とはムチのように細い動物だ」なんて認識しようものなら…見当違いも甚だしいですね。

 いま世界中で起きている諸問題も、やはり同じように視野の狭さから発生しているように思えてなりません。だからこそ、俯瞰して「象」の本質に迫ることのできる人物こそ、大統領(リーダー)になり得るのだと思います。鼻や耳といった各論は二の次ですね。

 ちなみにアメリカ大統領に話を戻すと、初代大統領のジョージ・ワシントンはアメリカでは独立と建国の英雄ですが、一転イギリスでは「自国の植民地を奪った反逆者」という悪人扱いです。人物論においても、やはり一面的な視野では正確に評価できませんね。自分の凝り固まった視野からいかに解放され俯瞰できるか。時代に求められているなとひしひし感じる今日この頃です。

 

大阪支店長 吉村 徳男