カラーバス効果という言葉をご存知でしょうか。ある一つのことを意識することで、それに関する情報が無意識に自分の手元にたくさん集まるようになる現象のことを言います。カラーバスは「color(色)」を「bath(浴びる)」、つまり色の認知に由来しますが、色に限らず言葉やイメージ、モノなど意識するあらゆる事象に対して起きるものです。

 

 人間の脳は、極端に言うと興味や関心のないものは視界に入っても情報として受け取ることはせず、 興味や関心あるものだけを受け取る仕組みになっています。つまり、自分の興味や関心というフィルターを通して世の中を見て情報を処理しているわけです。

 

 例えば、新しくゴルフを始めるとゴルフ関連のショップや情報が街中に溢れていることに気付くでしょう。 また、子供ができると子供関連の情報がどんどん目に入ってくるようになるし、あの車が欲しいと思った瞬間にその車がいたるところで走り出します。もちろん、どれもすでに存在していたものですが、意識しはじめたものだけが現実として浮かび上がってくるのです。

 

 このカラーバス効果ですが、新しいアイデアの創出、問題解決、人間関係の構築など、仕事をするうえでも役立つ場面があると言われています。普段からアイデアや問題を意識して仕事をすることで、より情報に敏感になり、きちんとそれらに気付きやすくなる態勢を整えることができるというわけですね。常にアンテナを張っておくことが重要だと言われる所以もこういったところから来ているのでしょう。

 

 一方で、都合の良い情報ばかりに目が向いて、都合の悪い情報を無意識に遠ざける(頭に入ってこない)というデメリットもあります。これは確証バイアスと呼ばれるものですが、自分が既に持っている先入観や仮説を肯定するために、都合の良い情報ばかりを集めてしまうというわけです。このような確証バイアスに陥らないためにも、しっかりと複数の選択肢を用意し、それらを多角的な視点で判断することが求められます。特定の情報を欲する状態にありながらも、偏見にとらわれない冷静さを常に持ち合わせておく必要があるということですね。

 

 まあ、単に意識さえしておけば万事うまくいくとは思っていませんし、こと仕事においては興味の域を超えなければ本当に欲する情報は得られないでしょう。結局は本気度の高低に起因するところが大きいとは思っています。しかしながら、特に意識していたわけでもないのに、「またこの話が(商品が、人が)目に飛び込んできた」、「またそのキーワードを耳にした」というときは、脳がそういう風に見せてくれているわけなので、無意識に脳が重要だと判断しているとも言えます。本気で取り組んでいるにもかかわらず行き詰まっていたり悩んでいたりしている方は、もしかするとそこにヒントがあるのかもしれません。

 

 福岡支店長 城戸 康行