ジャニーズ、日大、そして宝塚と今年は組織の問題が重大な事件として報道され、社会に大きく影響を与えた年だったのではないでしょうか。そのためか今年は組織の体質や体制について目を向けることが多かったようにも思います。

 

 組織とは、「共通の目的を達成するために、個々人が協力して割り当てられた役割を果たしていく集団」と定義づけられています。組織の利点は、調整・分業して協働することで効率化が図れることで、調整役としてマネジャーなどの役割を配置しピラミッドのような組織体制になることが多いことも特徴です。

 

 つまり、組織を構築するためには「役割」が必要不可欠な要素となるのですが、効率化という利点を得ることができる一方で、思わぬ落とし穴があることをご存知でしょうか。

 

 人は役割を与えられると、その期待された役割を演じてしまうため本来の自分と組織での自分との乖離・分断が起きやすいという点があります。意識・無意識問わず「任されている役割」をこなすことが仕事で、それが評価されるのですから当然といえば当然ですね。役割を与えられることで自覚が芽生えて成長するという効果もありますが、役割に忠実になるあまり普段ならできないような倫理に反するような事も平気でできてしまうという副作用もあるという事です。

 

 パワハラなどの行き過ぎた指導などはまさしくこうしたことが要因にもなっていると考えられます。普段なら他人に対して厳しく大きな声で叱責することができない人でも、任せられた役割に徹すればできてしまうということです。そして、その指導が常識の範囲を逸脱していることに全く気づかないのです。

 

 こうした副作用が起きやすい組織は閉鎖的であることが特徴です。いつも同じような価値観や視点でコミュニケーションが繰り返されることで偏った信念が強化増幅されてしまうのです。これをエコーチェンバー化現象と言い、視野が狭くなり間違いがあってもそれを正す機能が正常に働かなくなり、組織は停滞し衰退の道を辿ることになります。

 

 組織であっても個人であっても、自分に都合の良い人達ばかりと会っていては成長は望めないということですね。来年はどんな出会いがまっているか。自ら出会いを求めて行動していける年にしたいと思う今日この頃です。

 

東京支店長 白倉 玄