現代ではパワハラ問題が社会的に大きな焦点となっており、この影響で多くのリーダーが部下を叱ること自体を避けるようになっています。しかし、叱らない文化が広がることで、新たな問題が生じているのも事実です。

 

 重要なのは、叱ると怒るは根本的に異なるという認識です。多くの関連書籍も述べている通り、叱る行為は目的が明確であり、それは部下の成長や改善を促すために行われます。具体的な行動や結果に対してフィードバックが行われ、部下にはその改善の方向性が示されます。

 

 一方、怒るとは感情が先行した行動であり、その多くは非生産的です。怒りはしばしば個人的な感情の表れとなり、問題の解決よりもむしろ対立を生む原因となります。このような違いを理解しないままに叱ることを避けると、組織には様々な悪影響が及びます。

 

 1.成長の停滞
 適切な指導やフィードバックが行われない限り、部下は自分の問題点や成長すべき箇所を自覚することは難しく、また、そのような機会も減少してしまいます。リーダー自身がしっかりと叱ると怒るの違いを理解し、実践することが求められます。具体的なフィードバックを提供し、部下が同じ問題を繰り返さないように指導することが重要です。

 

 2.生産性の低下
 問題行動や効率の悪い作業がそのままにされると、それが積み重なり、最終的にはチーム全体の生産性に悪影響を与えかねません。対策としては、双方向のコミュニケーションを強化すること。部下が自らの意見や懸念を安心して話せる環境を作ることで、問題を早期に発見し、解決することが容易になります。これにより、リーダーと部下が協力して問題を解決する文化が形成され、パワハラのリスクも減少します。総じて、パワハラを防ぐために叱ることを避けることが、逆に組織に多くの悪影響を及ぼす可能性があることを理解することが重要です。

 

 3.問題の先送り
 リーダーが問題に対処しない姿勢がチーム文化となり、それが組織全体に広がる可能性があります。リーダーが逃げるように叱らない選択をすると、その姿勢が部下にも伝播し、問題を先送りにする、または見逃す文化が根付いてしまいます。

 

 リーダーには、叱ることの本質的な目的と意義を理解し、それを適切に行うスキルと勇気が求められます。それが、真に成熟した組織文化を作り、部下やチームを成長させる鍵となるでしょう。

 

福岡支店長 城戸 康行