答えを教えない恩師が、私に教えてくれたこと。
2026.09.02
Today’s Question(今日の問い)
人は、答えを教えられることで成長するのでしょうか。
それとも、自ら問い続けることで成長するのでしょうか。
Background(きっかけ)
学生時代、周囲の友人たちは就職活動を進めていました。
しかし私は、自分がどのような人生を歩めばよいのか分かりませんでした。
その答えを探すように、大学卒業と同時にブラジルへ渡ったのです。
世界最大の日系社会で日本語教師として働く中、人生を変える一人の恩師と出会います。
恩師は、毎晩のように私へ問いを投げかけました。
「人生とは何か。」
「教育とは何か。」
「はたらくとは何か。」
当時の私には、とても答えられる問いではありませんでした。
正直に言えば、「そんなことより、日本語教師として必要なことを教えてほしい」と思っていました。
人生や教育の話よりも、まずは目の前の仕事を覚えることの方が大切ではないか。
そんなふうに感じていたのです。
時には反発し、「せっかくブラジルまで来たのに、なぜ毎晩こんな話を聞かされなければならないのか」と思ったこともありました。
答えを教えてくれない恩師に、もどかしささえ感じていました。
My Perspective(私の仮説)
あれから二十年以上が経ち、ようやく分かったことがあります。
本当に大切なことは、人から与えられるものではないということです。
自分で考え、迷い、経験し、そして自分自身で気づいたことだけが、本当の意味で人生の土台になります。
恩師は、知識を教えようとしていたのではなく、生き方を教えようとしていたのだと思います。
後になって思えば、恩師が伝えたかったのはこのことだったのかもしれません。
勉強は、答えを学ぶこと。
学問は、問いを深め続けること。
もちろん、どちらも大切です。
しかし、AIが瞬時に答えを示してくれる時代だからこそ、これからますます求められるのは、「勉強」以上に「学問する姿勢」ではないでしょうか。
もしあのとき、恩師が人生の答えを教えてくれていたら、私は知識として理解した気になっていたかもしれません。
しかし、私の人生を支えてくれたのは、その答えではありませんでした。
答えを求める生き方から、問いと向き合う生き方へ。
あのブラジルでの日々は、私の人生の向きを変えてくれたのです。
だから私は今でも、「答えを教えられる人」より、「問いを育てられる人」に価値があると思っています。
それは教育だけでなく、経営も、人材育成も、そしてAI時代だからこそ、ますます大切になる考え方ではないでしょうか。
In Practice(実践)
協心でも、「すぐに答えを出すこと」より、「良い問いを立てること」を大切にしています。
経営会議では、「どうすればいいか」を議論する前に、「本当の課題は何か」を考えます。
人事制度でも、「どう評価するか」より、「どんな人や組織を目指すのか」という問いから始めます。
職員との対話でも、できるだけ答えを与えるのではなく、一緒に考える時間を大切にしています。
もちろん、すぐに答えが必要な場面もあります。
しかし、人が成長するとき、本当に必要なのは「考える機会」であり、「問い続ける環境」なのではないか。
私はそう信じています。
その原点は、ブラジルで出会った恩師との時間にあります。
Next Question(次の問い)
AIは、これからますます多くの答えを示してくれるでしょう。
だからこそ、人にしかできない役割は何でしょうか。
私は、「問いを育てること」だと思っています。
皆さまには、今、大切に育てている問いがありますか。
二十二歳の私には、その問いの意味が分かりませんでした。
だからこそ今、この問いを持ち続けることの大切さを、皆さまと一緒に考えていきたいと思っています。
協心のことば
人生を変えるのは、答えではない。問いである。